谷崎だね。
この本のすばらしさというのは……なんだろうな。
描写の美しさというのは、偉そうに言うが深くは私には理解できなかったと思う。
王朝文学とも位置づけられるのかもしれないけれども、その割には読みやすい物語です。
母を求める汚れのない思いを、とても控えめながら編み込むように描かれている。
まるで、御簾に控えるその姿を、手を伸ばせば触れることも難しくないが、顔も望むこともかなわないその姿に焦がれるがあまりに、ただ話しかているようかの切なさが描かれている。
やはり「母」というものに対する思いを描くの男性の方が同じ経験をしても描くときの思いと情熱のかけ方が違う。
母を求めて書く物語であるのなら、リリー・フランキーの数十倍もよいが、個人的には「山椒太夫」の方が何倍も美しいと思えてしまうな。
それも読みやすいし……
谷崎は不思議な方ねん。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
文士危うきに近寄らず
- 感想投稿日 : 2008年6月22日
- 読了日 : 2008年6月22日
- 本棚登録日 : 2008年6月22日
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