役にたたない日々

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  • 朝日新聞出版 (2008年5月7日発売)
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友人の薦めで、終わりのほうだけ読みました。

◆2007年夏

>私は18のときからわかっていた、夫婦生活の何十年かはとてもつらかろう、しかしそのつらさを持続する事は老後のためだけである。もう誰も華やぐ命など与えてくれなくなった同士が、縁側で、「柿むきて云うこともなく」お茶を飲む日のためにあるのだ。

間違いではないと思いますが、これは考え方次第だと思います。例えば紅葉を「葉の老化に伴う非適応的な副作用である」と言ってしまえばそれまでですから。

◆2008年冬

>「佐野さんはもう一年位で死ぬのに、こわくないの」
「全然、だっていつか死ぬじゃん、そんなのわかっているじゃん。」
「だけど何で、そんなに平気で元気なの、こわくないの」
「こわくないったら。嬉しいよ。あんた死んだらもう金いらないんだよ、かせがなくたっていいんだよ、金の心配しなくていいだけでもラッキーって思うよ」
「こわくないの」
「こわくないって、それにガンってすごくいい病気だよ、死ぬ時に死ぬじゃん、もっと大変な病気いっぱいあるじゃん、リューマチとかだんだん悪くなるだけで、ずーっと痛くて治らないとか、死ぬまで人工透析するとか、脳梗塞で寝たきりで口がきけないとか、体が元気で痴呆とか、何でガンだけ『ソウゼツなたたかい』とか云うの、別にたたかわなくてもいいじゃん。私、たたかう人嫌いだよ」


>私は今、何の義務もない。子供は育ちあがり、母も二年前に死んだ。(略)二年といわれたら十数年私を苦しめたうつ病がほどんど消えた。人間は神秘だ。

>でも思う。私は死ぬのは平気だけど、親しい好きな友達には絶対死んで欲しくない。死の意味は自分の死ではなくて他人の死なのだ。

>人はいい気なものだ。思い出すと恥ずかしくて生きていられない失敗の固まりのような私でも「私の一生はいい一生だった」と思える。本当に自分の都合のいいようにまとめるのは私だけだろうか。

気に入ったところを抜粋しました。
ご冥福をお祈りします。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ☆随筆・評論・対談・鼎談☆
感想投稿日 : 2018年2月20日
読了日 : 2010年11月12日
本棚登録日 : 2010年11月12日

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