後妻業

著者 :
  • 文藝春秋 (2014年8月29日発売)
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本棚登録 : 1126
感想 : 185

京都の資産家夫連続殺人事件が話題になったときにこの本が紹介されたので、図書館に予約、7か月待ってやっと読みました。

黒川博行さんて、京都府立芸術大学美術学部彫刻家を卒業、高校美術の先生だったそうです。
そういうかたがこのような小説を書くって、いったい何があったのでしょう?

思い出したのはギリシャ彫刻。その多くが失われ、ローマン・コピーによってその姿を想像することができます。
ローマン・コピーは大理石ですが、ギリシャ彫刻の多くはブロンズでできていたので、戦争のときに溶かされて武器にリサイクルされることもあったそうです。

彫刻を勉強されて美術を教えられた黒川博行さんが、こんな悪人ばかり出て来る暴力的な小説を書く人になったことに、共通するのではないでしょうか?

黒川博行さんが高校教師をやめて小説家一本でやっていくことができたのは、奥様が中学美術の先生だったおかげではないでしょうか。
しかも表紙の絵、奥さんが描いたものです。
このご夫婦は、京都府立芸術大学で知り合い、学生結婚したそうです。

今こうしてご主人の本が売れて、奥様にはお金が入ると同時に、彼女自身の作品を世に公開する幸せも得ているのです。

この本は『後妻業』以外にもあまり美しくない男女関係を描くと同時に、黒川さんの理想の夫婦っぷりも、実は披露しているのです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ☆小説☆
感想投稿日 : 2018年3月24日
読了日 : 2015年7月30日
本棚登録日 : 2015年7月30日

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