■ネガティブの極み、名人はここまで到達できる■
不幸、絶望、ネガティブという分野に関してカフカは異次元にいる。並の人間が到達しうるレベルをはるかに超越している。
結婚することや子供を持つことに対する恐怖や絶望感は普通の感覚では理解できない高み(低み?)だ。病気に対する思いに至っては一周回ってポジティブまでたどり着いてしまった。もはや神の領域!
カフカが作品として残した小説は、翻訳を介するということもあり、いまいち入り込みづらい。しかし、彼の日記やノート、婚約者や父への手紙のリアルな切実さが伝わってくる。しかもぶっ飛んでいる。
自分はダメだ、弱い、ということを、これでもかと畳みかけるように強く主張してくる。ネガティブさ、自信のなさという点において、彼はだれにも負けない自信を持っていた(?)に違いない。
ポジティブな言葉は世にあふれており、口に押し込むごとに本当においしいのかわからなくなってくる食べ放題のケーキのように徐々に魅力を失う。そして後悔が襲ってくる。そんな時はあったかいお茶に限る。
巷にあふれる人生論や格言でポジティブなふりをするのに疲れや違和感を覚えたなら、どっぷりカフカのネガティブワールドに浸り、クスっと笑ってみるのもいいかもしれない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ノンフィクション・エッセー
- 感想投稿日 : 2021年4月23日
- 読了日 : 2021年1月29日
- 本棚登録日 : 2021年4月4日
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