イラク 戦争と占領 (岩波新書)

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  • 岩波書店 (2004年1月20日発売)
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(2004.08.01読了)(2004.06.27購入)
2003年3月20日に米軍、バグダードへの爆撃開始。5月1日にブッシュ大統領、戦闘終結宣言。7月13日にイラク人による統治評議会設立。12月13日に米軍、フセイン元大統領の身柄を拘束。
戦闘終結宣言から、1年以上経過したのに、いまだに戦闘がやまない。フセインはこのような人たちをどのように統治していたのだろうか。アメリカは、十分研究したのだろうか。日本について研究した「菊と刀」に当たるようなものはあるのだろうか。

「私の中のイラクは、以前から人や羊がのんびりと往来するような温かい伝統的共同体のイメージではない。近代産業社会の行き着いた果ての、工場とコンクリートとガソリンの臭いのイメージだ。」(イラクに平和が戻ったら、メソポタミア文明の発祥の地なので訪れてみたいと思っているが、現在はかなり近代的な国家のようだ。)
「電力不足、ガソリン不足、通信網の破壊、復旧しようとしても修復した後から破壊されていっこうに復旧が進まない。」
「かつてフセイン政権に土地や家屋を接収されて追い出された者たちが、政権崩壊とともに過去の所有権を主張して現在居住している住民と衝突する。大部族の土地だった場所などでは、武装した部族集団が大挙して住民を追い出すような事態も発生した。」(東西ドイツの統一の後でも同じような土地争いがあったようだ。)
「2003年7月に、ウダイ、クサイというフセインの二人の息子が米軍の攻撃によって殺害され、12月にフセインが米軍に拘束されても米軍に対する攻撃は減っていない。抵抗勢力はいったい誰の指揮の下に動いているのか?」
第2章では、大量破壊兵器の査察から戦争までが述べられ、第3章では、アメリカの占領後について述べている。アメリカの一貫性のなさ、迷走振りが述べてある。日本の統治と同じようにうまくはいかないようだ。アメリカの日本統治はいまだに続いているけど。
第4章は、フセインの独裁で、徹底した中央集権体制をとってきたので、政権の崩壊後、無秩序な混乱状態が予想されたのに、宗教指導者による秩序の維持が行われている。

新聞、テレビではなかなかわからないことが、非常にわかりやすく述べてある。

著者 酒井 啓子
1959年生まれ
東京大学教養学部教養学科卒
 アジア経済研究所参事
著書 「イラクとアメリカ」岩波新書、2002年8月

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 中東情勢
感想投稿日 : 2009年11月19日
読了日 : 2004年8月1日
本棚登録日 : 2004年8月1日

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