素敵な作品でした。
戦争が始まる少し前に、山形から東京に女中奉公に出たタキの回顧録。
昭和初期の東京、大陸での事変で情勢は不穏ながら、それを感じさせない時代描写に、タキの平井家での幸せな日々が、これから激しくなっていく戦争を前に、哀愁を漂よわせているように感じました。
最初、タキは板倉さんに恋をしているのかと思ったけど、そんな単純なものではなかった!タキは、板倉さんではなく、時子に想いを抱いていたんだ・・・それが恋なのかはよくわからないけど、特別な感情を抱いていたのはわかった。タキの時子への気持ちがわかるような気がする。山形の田舎から出てきたタキが、東京の、モダンな美しく明るい時子の女中となり、自分を可愛がってくれ、憧れ以上の感情を抱くのは自然なことだなと思う。
タキが、時子の板倉さんへの手紙を実は渡していなかった事がわかった最後、タキのその時の想いを思うと、言葉にできなかった。
平井家での日々、それを振り返るタキとその回顧録ノートを見た健司との会話、健司に切り替わった最終章、内容や展開がすごく面白かった。
ノスタルジーに溢れていて、少し切ない、それでいて美しい物語でした。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2020年10月18日
- 読了日 : 2020年10月17日
- 本棚登録日 : 2020年5月10日
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