緋文字という言葉はときどき耳にしたことがあり、「スカーレットレター」というとなんだかロマンチックだし、とずっと引っかかっていた言葉だった。図書館でたまたま見つけて読むことにした。
ホーソーンの作品には序文が寄せられることが多いそうで、「税関」を読むことで、緋文字本編を読む際に、実際にあった出来事を覗き見しているような、物語への没入感が強まったと感じる。
物語そのものとしては、パールの父親が誰なのか?があまりにあっさりしていて、もう少しミステリーものの要素やドラマティックな要素があるかと思っていたので、「なーんだ最初から登場してる牧師なのか」と拍子抜けしてしまった。
パールとヘスターのその後も、愛情を胸に幸せに暮らしました、という感じで、もっと波瀾万丈な物語を期待していたので物足りなく感じてしまった。
ヘスターと牧師がどんなふうに親密になったか、へスターと結ばれる際の牧師の心境はどうだったかの描写も読みたかったけれど、この作品は筆者があえて書かなかった部分(牧師の緋文字の様子など)があるし、そこは想像に任されているのかな。
キリスト教の教えに関して知見が足りていないこともあり、全体的にふうんと思って読んでしまった。
ピューリタンの教えの厳しさは意外なものがあった。いまのアメリカの(都市部の)イメージとはやはり結び付かなくて、どんな経緯でこの厳格さは薄まって行ったのだろう?
そして1800年代当時で、既に失われた技術と評されたヘスターの緋文字の刺繍はどんなものだったのかなあ。
光文社の古典新訳文庫は初めて手に取る。
なんとなく「古典の表紙でよく見るあのイラストね」というイメージだけ持っていて、古典は読みにくいだろうし、と避けていたものの、とっても読みやすかった!
今回緋文字を読んだことで光文社の古典新訳文庫が「いま、息をしている言葉で、もう一度古典を」という意図のもと発刊されていると知り、もっと早く読めばよかったと思った。他の古典も読もうと思う。
- 感想投稿日 : 2022年5月9日
- 読了日 : 2022年5月9日
- 本棚登録日 : 2022年5月9日
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