生きるぼくら (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店 (2015年9月4日発売)
4.19
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本棚登録 : 13917
感想 : 1043
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新年度、ここで出会った彼らと、どんな日々を過ごすのだろう。
そして彼らにとって、ここでの日々はどんな風に残るだろう。
たぶん大人の関わり方によって、それは「人生の糧」になるのだろう。
学校がそういう場所になるように、わたしはいたい。

改めて生活ベースの「生きる」ってことに焦点を当てたいなってことで、長らく積読化していたこちらの作品を読むことにしました。

原田マハさん
ブクログではフォロワーさん全員読んでるんじゃないかっていう作家さんだけれど、わたしは初めて触れました。
美術館や絵画に造詣のある作家さんという印象で、美術館へ行くと同行者を外で待っている時間の方が長いような美術オンチのわたしには、なかなか手が届かなかった作家さんだ。

しかしである。
読んでいてこんなキラキラした作品久々に読んだな、と思った。
読みながらそのキラキラした世界を斜めに見ている自分に鼻白んだ。
わたしは本当に、心をざわつかせてくる作品とか、先の展開が読めない作品が好きなんだな、と改めて感じる。

我慢を美徳とした時代があって、それを今でも美しいとする人たちもいるけれど、「泣き言を言わない嫁が美しい」みたいな場面で普通に主人公が感動しているのにも萎えてしまって、「いやいや、お前はそこ反発しろって!」と、変な応援までする始末。
どうにも主人公である「麻生人生」青年の人間性がブレているように感じてしまって、うまく落とし込めなかった。
最後の方は、かなり強引に読み進めた。

この作品は、人の「強さ」にフォーカスしている。
わたしのように、「闇を描いて光を感じる」タイプの人間には、もっともっと人の「弱さ」を描いてもらった方が、感情移入できたのかもしれない。
だけど生きてく時に大事なのって確かにこういうポジティブなエネルギーなんだよな。
でも現実ってそううまくいかない。
だからこそ、わたしは本を読むし映画を観る。
だからせめて、本の世界では、もう少し弱音を吐かせてほしかった。

でも、フジファブリックを聞きながら実家に帰る電車に揺られて、案の定目が覚めたら田んぼだらけになっていた田園風景の中、水が張られた田んぼを見ていると、心が動いた。

実家を囲むたくさんの田んぼ。
そこを機械が動き回り、稲が植わっていく。
なんというか、それでいいではないかと思ってしまったのだ。
確かに、作品のような手での農作業は必要だけれど、どうしても「古さ」を捨てきれない。
古さを美徳として、それ以外を排除しているような、それが最後まで捨てきれなかった。

なぜ米作りが初めての若者がこんなに米作りに詳しい目線でいるのか、であるとか、こんなにいきなり生きてく場所見つけられるかね…?であるとか、いろいろ思うことはあって、そして何よりこんな風にこの作品をナナメから見てしまう自分が一番嫌で仕方ない。

みなさんなら楽しく読めると思います。
みなさんならすごくポジティブな気分になれると思います。
みなさんなら稲作やってみたいと思うと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年5月1日
読了日 : 2022年5月1日
本棚登録日 : 2022年5月1日

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コメント 8件

まことさんのコメント
2022/05/01

naoちゃん。こんばんは♪

本のタイトルと、naoちゃんのお名前を見て、一瞬、何かの間違えじゃないかと、思ってしまいました。(失礼ですが)naoちゃんと、マハさんって、組み合わせ、意外な感じと、思ったら、やっぱり、初マハさんだったのですね。
それで、レビューも、なんかいい感じだな~。さすが、naoちゃん!と思ったら、最後はそういうオチだったのかあ。
「生きるぼくら」は私も出来すぎの話だと思ったけど、他にもマハさんには、いい作品たくさんあるから、naoちゃんの好みの作品の合間があったら、どうぞ、他も読んでみてくださいね。
ちょっとおせっかいですが(*^^*)

naonaonao16gさんのコメント
2022/05/01

まことさん

いやはやー、ばれましたか笑
やっぱり意外な組み合わせ、なんですね!

この作品が他のと毛色が違ったのか、そもそもわたしがマハさんの作品は少し合わないのかわかりませんが、やはりこんな感じです笑

そう!ちょっと出来すぎなのです!
先が予測できてしまって、そしてその通りに進むので、うーん…もう少しひねりがほしかったかも、なんて…

まことさん、よかったら教えてほしいのですが、マハさんの作品で、ざわつかせてくる系の作品てありますかね?笑

まことさんのコメント
2022/05/01

naoちゃん。

コメントしたあとで、やっぱり、naoちゃんに、おすすめしちゃったけど、マハさんは、基本エンタメ系だし、趣味に合うものあんまり、なかったかも?
って、ちょっと後悔したのですよ。
ざわつく作品は、今、ざっと検索して、思い出そうとしたのですが、「サロメ」。「星がひとつほしいとの祈り」「あなたは誰かの大切な人」。とかはどうかな。
ざわつく作品なら、マハさんから選ぶより、そっち系が得意な作家さん選ぶ方が早いかも?
マハさんに、ざわつく作品を求めるのは、少し違うかな?
おすすめしといて、変な答えになっていますが。

naonaonao16gさんのコメント
2022/05/01

まことさん

いえいえ、コメント嬉しかったです!
そして、時間を割いて作品を選んでいただいたことも!ありがとうございます!!

やはり、マハさんはざわつき系の作家さんではない、ということなんですよね…
他の方のレビューを拝見して、みなさん本当に感動していらっしゃって、そう思いました…
それでも、これまで積読していた作品にこのゴールデンウィークに手を出すことが出来て、発見もいくつかありましたし、よかったです!

作品教えてくださり本当にありがとうございます^^
本屋さんで見てみますね!

マリモさんのコメント
2022/05/04

naonaonao16gさん

こんにちはー!
おお、naonaoさんとマハさんの掛け合わせ、意外で良いですねー。こういう感想好きですよ。
私もこの本を少し前に読みまして、自分用のメモで感想残してましたが、「面白いのだが、あざとい感じも…。一気に悪化して焦点も合わなくなり、失禁もするようになったおばあちゃんが、いきなり治る(元の状態に戻る)というのはさすがに不自然な気がする。こういうのに、素直に感動したぁ!と言えなくなってしまった自分」などとブラックなこと書いてました。←せっかく隠してたのに披露しちゃってるし笑
マハさんの現代ものは、先の読める真っ直ぐなものが多いですかね。最近文庫本になった「スイート・ホーム」は、登場人物が綺麗すぎて最後まで読めなかったです。綺麗すぎて読めないとか、何となく自己嫌悪になりますよね〜^^;
アート系は綺麗だけではない世界観も楽しめるので、またぜひ挑戦してみてください!

naonaonao16gさんのコメント
2022/05/06

マリモさん

おはようございます!
コメントありがとうございます^^

おおーー!やはりこの組み合わせ珍しいんですね笑
隠していた感想を共有してくださりありがとうございます笑
うん、やっぱりそう思いますよね…ちょっとうまくいきすぎ、きれいすぎるんです…
こういう展開に何も考えず涙や鼻水を流したいもんです笑

わたしはこういうまっすぐな元気のもらい方をしないけれど、あくまでそれはまっすぐな作品にあんまり触れてこなかったからかなと思ったんですが、やっぱり合わなかったのかな…
逆に自分の嫌な部分を見てしまうというか笑

やっぱりマハさんといえばアート系なんですね!ちょっと本屋さんのぞいてみます!
ありがとうございました~

bmakiさんのコメント
2022/05/07

こんにちは。
(笑)笑ったら失礼ですけど、面白い感想だなぁって思いました。
確かにマハさんの作品とnaonaoさんってイメージ結びつかないですね(*^^*)

ナナメから作品読んじゃうの、全然アリだと思いますよ(笑)
私も上から目線で読んでみたり、斜め目線で読んでみたり、あまりに出来すぎた本を上手に消化出来なくてごめんなさいなことよくあります(*^^*)

そんな感想を持っても、それを上手く自分の感想に出来ないんですけど、naonaoさんの感想は正直でとても面白いです(*^^*)

私は稲作やりたくなるのかなぁ?この本読んでみたくなりました(笑)

naonaonao16gさんのコメント
2022/05/08

bmakiさん

こんばんは!
コメントありがとうこざいます~

やっぱりマハさんの作品読んだことある方からしたら、なかなかわたしと結びつかないんですねー!
ナナメに読んじゃいましたけど、でもそれがわかっただけでよかったのかなと思います。知らないで「合わない」と決めつけるよりも。

すごく悩んだんですよ、どうやってレビュー書くか笑
でも、やはりここは素直に描きたいと思い、素直に描かせて頂きました!笑

この感想で読みたいと思って頂けるの奇跡ですよ笑
是非レビューお待ちしてます!とっても読みやすい作品ですよ!

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