ふる (河出文庫 に 9-1)

著者 :
  • 河出書房新社 (2015年11月6日発売)
3.12
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本棚登録 : 2336
感想 : 212
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これまでわたしが読んできた西さんの作品と比べると、この作品は、個々の描き方としては西さんの作品なのだけれど、全体としてはいつもの西さんの作品とは違った、気がする。

ラストに向けてのエネルギーの強さや展開はいつもの西さんだ。でも、白くてふわふわしたものの正体であるとか、語りかけてくるものの正体であるとか、こういう曖昧な終わり方をする西さんの作品は初めてだ。

あとがきでいのちについての記載があって。
わたしは誰かに嫌われたくない。その場限りで終わる人付き合いでも、嫌われたくないと思ってしまう。わたしが何かを言って、相手がそれに傷ついて、それにわたしが傷ついて。結局自分がオチとしてその場が落ち着くことでよしとするのは、結局は自分が犠牲になって終わるのだということ。わたしはまさに花しすだなー、なんて思ってた。最後に新田人生が言う。
結局生きるとは、愛だ。
愛と、白いふわふわしたものと、女性器と。作品を通して、わたしはそれらをうまく結びつけられなかった。
女性器と、排泄と、器具の挿入と、生理。生々しい、女性であるということ。それが全部、生きるということ、いのちの物語だ。
西さんのイメージ、イメージ、イメージ、全ては汲み取れなかったかもしれないけれど、この物語が、いのちと愛に包まれた作品であることは、しっかりと受け止めました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年3月17日
読了日 : 2019年3月14日
本棚登録日 : 2018年9月17日

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