2012.7記。
「チボの狂宴」の著者バルガス・リョサ再読。ペルーの少数民族マチゲンガ族の「語り部」が伝える神話的記憶と、人類学者の考察やドキュメンタリー制作の描写が交互に描かれる。
「木が血を流した時代」と語り部が呼ぶ、白人の過酷なゴムプランテーション経営による人口の激減、乱開発から滅び行く民族を守ろうと努力する同じ白人の人類学者たち。定住し農耕することを教え、人口維持に貢献する学者たちは、しかし同時に境界なく森を行き来する民族の誇りと文化を破壊したのだろうか?こうした問題を考えさせられながら、めくるめく神話の数々にも圧倒される。
ところで、本作のハイライトである「大地の揺れ、怒りを鎮めるため突如姿を消す」マチゲンガの家族のシーンは、僕に村上春樹の「神の子どもたちはみな踊る」の冒頭部分を思い起こさせた。阪神淡路大震災の報道を一時もテレビの前を離れずに無言で見続けていた「妻」が、突然姿を消すところからこの小説は始まる。発想の源泉が偶々似ているのか、村上がリョサを読んでインスピレーションを受けたのか、とにかくいずれもとても印象的なシーンであった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
海外文学
- 感想投稿日 : 2019年1月3日
- 読了日 : 2019年1月3日
- 本棚登録日 : 2019年1月1日
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