何回目かの再読。
初読は大学で。役人に興味があった。
2回目は若手社会人の頃。
3回目、ガンで余命宣告を受けた親父がなぜか読んでいたのを見て。勤め人としてのあれこれを思い出していたのか。
そして今回。当たり前だが、読後感は毎回大きく異なる。
昭和30年代のあらゆる意味でありえない働き方、理不尽。
定時退社しただけでやる気不足扱い。男女差別を差別とも思わない。いや、むしろ通産省は他の役所より積極的に女性キャリアをとるんだ、と。そしてその新人に「お人形さん」とあだ名をつけることが「ユーモア」だった時代。
いっそすがすがしいまでに、「国家のため」と「省のため」を混同した政策論議。はあ。
主人公の「豪放磊落」気取りの態度も、今日的に見るとまったく共感できない。
一方で、ここで戦わされる企業再編の必要性を巡る議論が今でも相当程度有効なことにも驚かされる。
特許行政の遅れとかも含め、今日の「経済的安全保障」論のプロトタイプとも言うべき論点はすでにその萌芽があったと。
そして、中身が今から見れば時代錯誤だとしても、「これはやるべき」と納得できた仕事に滅私奉公している姿には、いくらワークライフバランスがあたりまえの今日でもやはり胸が熱くなるものだ。そして、人事というものの巡り合わせの不思議さにも時代を超えたリアリティを感じる。
というわけで、かなりいろいろな意味で今の時代には馴染まないストーリー。それでも時代の記録として、そしてある意味普遍的な「働きバチの誇り系小説」として、その価値は全く損なわれていないと感じた。
- 感想投稿日 : 2022年1月31日
- 読了日 : 2022年1月31日
- 本棚登録日 : 2022年1月31日
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