須賀敦子さんのエッセイで何度かタイトルを目にし、いつか読んでみたかった本。ラヒリを読んだ勢いで、インドを舞台にしたこの本を手に取った。
読み始めた途端、不思議な迷宮の世界を彷徨ったような錯覚に陥る。
余分な言葉を削ぎ落とした洗練された詩的な文章。
どこまでが夢でどこまでが現かわからなくなる。訳者あとがきによると「みじかい各章が、それぞれ独立しているようでいて、ひとつの全体にしっかりと組み込まれている…」とあり、物語に入り込んでぼんやり読んでいると、違う章に移ったことに気がつかなくなる。
途中、作中の登場人物はここでは何語で話しているのだろう? と、漠然と感じることがあった。その後読んだ訳者あとがきに、「流麗で正確で、ときには感動をさそうイタリア語で書かれていながら、この中には、これまでイタリア語では表現されることのなかった思考回路が認められるように思う。」とあった。原語と思考回路の関係、興味深い。イタリア語の持つ思考回路とはどんなだろう、その言語に接したことのない私には知る術もないが、ここでは翻訳者と自分の感覚を信じて感じたままを受け止めようと思う。
とても読みやすく、読後感がよかったのは、読み慣れた須賀さんの翻訳だからだろうか? 素晴らしい原作に優れた翻訳、月並みだけど久々に良い本に出合えたという印象を持った。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2023年12月21日
- 読了日 : 2023年12月16日
- 本棚登録日 : 2023年4月26日
みんなの感想をみる