今よりも少しだけ未来の世界を舞台にした、生きている少女の人形「観用人形(プランツ・ドール)」をめぐる連作短編集。甘いミルクと砂糖菓子、そして愛情を栄養として生き続ける「永遠の少女」。その無垢さ、美しさに人は焦がれ、時には報われぬ愛ゆえに破滅するほどまでに執着する。しかしどんなに想いを寄せても、金を積んでも、「彼女」に選ばれなければ手に入れることはできない。
友人に薦められて手に取り、はまった作品。精緻で美しい絵柄の魅力もさることながら、プランツにまつわる話も、コメディタッチのどたばたものから穏やかで優しい話、そして静かな狂気の話など、様々だ。毎回違うプランツが出てくるが、どの子も可愛い。どちらかと言うと「心温まる話」が多いのだが、個人的にはやや狂気じみた愛情を描いた作品が好きだ。その中でも「メランコリィの花冠」は傑作。
それにしても、こんなにも美しく可愛いプランツが微笑んでくれるなら、本当に何でもしてあげたくなるよなと思う。そんな私がとても共感できたのは「スノウ・ホワイト」と「天使の役作り」。特に「スノウホワイト」の主役である名も無き宝石商の、最後の一言には思わず頷いてしまう読者も多いのでは。日常に疲れた時に読むと、プランツの店を本気で探してしまいそうになる。文庫版は全二巻。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
漫画
- 感想投稿日 : 2006年10月26日
- 読了日 : 2006年10月26日
- 本棚登録日 : 2006年10月26日
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