本音で対論! いまどきの「ドイツ」と「日本」

  • PHP研究所 (2021年8月27日発売)
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ドイツの○○は素晴らしい、それに比べて日本は、、、

というドイツ礼賛(らいさん)の発言をしばしば耳にします。
教育や環境問題や働き方や政治の在り方など、日本の抱えている問題に何か意見したい時に、
ドイツでできているのだから日本でもできるでしょ。と主張するための根拠にしているわけです。

「必要以上にドイツを褒めちぎることは、ドイツの正しい理解に繋がらない。」
「日本のマスコミは都合のいい部分しか報道していない。」
と、ありのままのドイツを知って欲しいと思っているのが、マライ・メントラインさん。

池上さんと増田さんは、マライさんに何を語らせるかのネタ振り役だと思って読みました。

実はこういうことだとの説明がいろいろとありました。
そのうちの幾つかを簡単に紹介しておきます。

メルケルさんは、東日本大震災で起きた福島の原発事故を教訓にしてドイツでの脱原発を決めたみたいに日本では報じられています。
実は、チェルノブイリの放射能がドイツにも汚染問題を作っており、脱原発と福島はあまり関係はなく、2000年くらいからその方針だった。
メルケルさんはむしろ原発利用の延命策を打ち出していたが、その矢先に福島で原発事故が起こり、早期の脱原発へと舵を切り直すはめになったのだと。

教育では、評価するのに、テスト結果3割、日常の授業7割くらいの比重らしい。
日本だとほぼテスト結果だけで評価されるので何故?と思いました。
ドイツではテストは論述なので、先生の思想や好き嫌いに左右されるという親からの批判があるのだそうです。
だから、授業での発言内容や課題に取り組む姿勢を評価ポイントにせざるを得なくなっています。

マライさんが驚いたというのが、日本のマークシート方式で採点するテスト。「問題の答えが書いてある。ドイツでは考えられない!」
自分の描いた文章が中学の国語のテストに使われていたことがあるそうだ。
この時の筆者の気持ちを問うのに5択で回答を選ぶ。マライさん自身の答えは2と3の間くらいかな?だったと。

ドイツは難民を大量に受け入れていますが、それが問題だとし、難民を入れるなと強く主張していた政治グループがあります。
ところが、コロナによる人々の移動制限により、自ら何もしないうちに実現してしまったので、新しい主張を作らざるを得なくなりました。
それが「反マスク」運動。コロナ禍の最中になのに?と日本だと受け入れられない主張です。
これも、"ナチスは緊急事態宣言を出して国民の自由な権利をどんどん奪っていった"、という日本には分からないドイツならではの闇の背景があるためだそうです。

ドイツでは歴史でナチスを必ず取り上げ、皆で議論し、反面教師としているそうです。
だから、コロナ禍でも「反マスク」運動容認となるのに納得いかない面もありますが、、、
日本では現代史はほとんどやらず「あとは教科書を読んでおいて!」で済ましてしまうのとは大違いですね。

国境を9か国に囲まれているドイツでは、地政学的条件を加味した近隣諸国との関係を維持するのも大変です。
そして、今のドイツは西と東が統一されて成っています。
ドイツ国民は「どうしてこれが必要なのか」を論理的に説明し実践する政治家を選び、難しい問題を克服してきました。

マライさん曰く、
日本人は「国が決めた」から仕方がないとあきらめムードに入ってしまう。
何かを決めるのは"国"ではなく、その時の"政府"。
その"政府"を変えることができるのは国民。
賛成するのも反対するのも人間(国民)の役割だと思う。

日本人は政治に無関心で役割を果たしていない、と言われています。
もうすぐ衆院選がありますが、日本国民はどういう意志表示をするのでしょうか?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: *池上彰
感想投稿日 : 2021年10月19日
読了日 : 2021年10月19日
本棚登録日 : 2021年9月1日

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