残像に口紅を (中公文庫 つ 6-14)

著者 :
  • 中央公論新社 (1995年4月18日発売)
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感想 : 723
3

「あ」が使えなくなると「愛」も「あなた」も使えなくなった。
文字が1文字ずつ消えてゆき、最終的には何も無くなるという斬新な小説。

驚くべきことに、この文字だらけの小説には最初から「あ」がないのだ。
愛、あなた、表す、あれ、あの、〜ある、明日… そんな馬鹿な!
よーし、私も「あ」抜きで行こう!

最初に消える文字が「ぱ」なら分かる。
『だって〝ぱ〟なら普通に文章を書くに◯たり、登場頻度が少ないのは◯きらか!』
もとい…
『だって、〝ぱ〟なら普通に文章を書きつづるに、登場頻度が少ないのは比較的に常』
つまり、こういうこと。

文字が消えると,語彙も失われる。
変わる語彙が必要となる。
1文字ずつ消えてゆく世界で、どんな物語が紡がれるのだろうと、読み出すと止まらなくなるけど、物語という物語は実はない。小説、壮大な言葉の戯れとして楽しむ一冊。
ただただ、作者の裁量に驚くことしかり。

1部でワクワクし、2部でからかわれているような気になり、3部で関心の唸りを発する。

今年の23冊目

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 筒井康隆
感想投稿日 : 2022年5月31日
読了日 : 2022年5月30日
本棚登録日 : 2022年5月30日

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