残像に口紅を (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 3544
レビュー : 314
  • Amazon.co.jp ・本 (337ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122022874

作品紹介・あらすじ

「あ」が使えなくなると、「愛」も「あなた」も消えてしまった。世界からひとつ、またひとつと、ことばが消えてゆく。愛するものを失うことは、とても哀しい…。言語が消滅するなかで、執筆し、飲食し、講演し、交情する小説家を描き、その後の著者自身の断筆状況を予感させる、究極の実験的長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • ◯文字が徐々に消えていく小説で、いかなる内容を描写していくのか、興味深く読んでいたが、いささか小説として何をか感じるのは難しかった。
    ◯文字が減っていく中で、豊富な語彙力を駆使して文書を紡いでいく様は圧巻。また、物語としても展開が小説的に自然に進んでいくのも凄みを感じる。
    ◯少ない単語の中で展開されるシーンの一つ一つにも、少ない故に選ばれており、演出もそれに応じたものになっていると思われる。例えば、講演での
    尊大な語り口や、言葉が足りないからこそ、悲しい伝記など、さすがと思う。
    ◯やはり表現の自由な小説を読みたい。他者への影響は多々あるかもしれないが、それをそれだけで受け取ることなく、読む側にとっても小説では自由でありたい。

  • マンガ「幽遊白書」で、私がいちばん好きな戦闘…それは、蔵馬と海藤の言葉によるバトルです。
    確か1分につき、使えるひらがなが1文字ずつ消えていくなかでの戦いで、言葉遊びがすごく面白かったのです。

    その元ネタになった小説がこちらの「口紅に残像を」だと知り、読んでみました。

    なんとも実験的な小説で、ストーリーはかなり無理がありますが、それでも、だんだん少なくなる文字数で、ここまで書けるんだ…とおどろきました。
    特に、主人公の情事シーンが圧巻…
    たとえの応酬ばかりなのに、それがかえってものすごく色っぽくなっていて、もう降参!という感じでした。

    ストーリーを求めたい人には向いていませんが、言葉と表現と小説の限界をみたい方は、一度その世界をのぞいてみてもよいかもしれません。
    ただし、後半にいけばいくほど辞書は必須です。

  • 読書芸人でカズレーザーが紹介していた本。
    「幽遊白書」の元ネタになったということで興味を持ち購入、読了。

    「文字が一つ一つ失われていく」という非常に変わった小説。
    しかも「会話文」だけでなく「すべての文書」から文字が消えていくという驚愕の設定。
    「究極の実験的長篇小説」という言葉がとても巧く表現しているように思う。

    文字が失われていくにも関わらず、多彩な文章表現で違和感無く物語を綴っていく筆力には、ただただ圧倒された。
    特に瑠璃子と交わるシーンでは、普通の小説と大差無く、むしろさらに妖艶な雰囲気が出ているようにすら感じられた。
    限定された条件だからこそ、本来持っているポテンシャルが余すところ無く発揮されていたようにも思う。

    一方で、物語全体としては非常に動きが少なく、中盤からの中だるみ感は否めなかった。
    個人的には「技巧に特化」し過ぎている感じが最後まで残り、全体として何となく薄っぺらく感じてしまった。
    自分との相性はあまり良くなかったかも。

    「筆力」を考慮し、全体評価としては3点とした。

    <印象に残った言葉>
    ・実はこの小説の冒頭から、五つの母音のうちひとつがすでに失われているんだ。気がついていたかい(P21、津田)

    ・それはやはり、お傍にまいるからには、君の横に並んで、自分のからだをそっと横たえることになります。当然、そのまま何もしないでじっとしていることには耐えられないから、じわり、じわり、と自分の片手を、畳の上に投げ出された君の手に伸ばしていくことでしょう。その片手の先、鋭い触感の密なる部分が密なる部分にそっとさわって、それはつまりわたしと君のからだの史上最初の部分的つながりということになります。(P159、佐治)

    <内容(Amazonより)>
    「あ」が使えなくなると、「愛」も「あなた」も消えてしまった。世界からひとつ、またひとつと、ことばが消えてゆく。愛するものを失うことは、とても哀しい…。言語が消滅するなかで、執筆し、飲食し、講演し、交情する小説家を描き、その後の著者自身の断筆状況を予感させる、究極の実験的長篇小説。

  • 高校時代に読んで、おとなになってからも再読しています。今回で3度目だと記憶しています。
    作家としてのチャレンジとは、このことですよね。
    筒井康隆さんはやっぱりすごい人だー!と何度読んでも思います。最初に読んだ時からは30年程度経過しているのですが、「大人として、作家として成功している人が、自分の扱う文字・文章という世界で文字をどんどん失っていく」というシチュエーションにチャレンジした、ということは本当に衝撃なことでした。
    おとなになった今、読んだ方が、その凄さがわかると思います。
    私も今やっている仕事に、人生に、、、ずっとずっとチャレンジしていきたいなと思います。

  • 以前から読みたいと思っていた。五十音が少しずつ消えていくという斬新で実験的な作品。
    とにかく作者の筒井さんのボキャブラリーの多さに脱帽した。妻も三人の娘のことも名前に含まれる音が消えることで存在は消えてしまうのだが、妻や母、父、娘という単語が消えていない限り主人公はそれらを認識出来るという仕組みで残酷とさえいっても過言ではない。
    音が消えていく中で主人公は作家として官能シーンや檀上で限られた音を駆使してスピーチにチャレンジをする挑戦も。流石に後半には大半の音がなくなったために支離滅裂な感じがしたがそれでも文章になっていてすごいと感服した。

    ※本文も一音を意図的に消失させて記述

  • 以前カズレーザーさんがおすすめしていたので読んでみた。

    世界から音が一音ずつ消失する物語。
    はじめは物語内の会話から音がなくなるのかと思っていたが、まさかこの物語自体からもなくなっていくとは…

    音がだんだんと消えていくが、違和感なく読み進められる。筒井さんの語彙力に圧巻。
    ただ、使える音で表現をしようとすると、どうしても出てくる言葉や漢字は普段使わないものが多くなるので辞書は必須となる。

    言葉選びはすごいが、中盤からは使える音も少なくなり、物語もなかなか進行しないのでどうしても中弛みはしてしまう。

  • これは小説でしかできない表現だと思いました。

    文字と概念が制限されていく中で、言葉を駆使して言い換えていく、作者の豊かな語彙力に脱帽しました。

    普段会話に使わなかったり本でもめったにお目にかからないような単語や漢字を調べることもありましたが、それをすることによって新たに言葉を知って楽しかったです。

    ある事柄を「エモい」とか「ヤバイ」とかで片付けることができるのも悪くないですが、たくさんの語彙で表現される言葉も美しいです。

  • ことばに感情を動かされるのか、それともことばが示しているイメージに感情を動かされているのか
    ひとつの言語が消滅した時に惜しまれるのは言語がイメージか。

    読者側の考えを読み取るような書き方をしている
    文字がきえる
    自分の娘が消える、最初は残像が残っていてもいずれ何もかも忘れて行き、最初からなかったものとなる。
    世の全ては虚構なのかもしれない。

    言葉が消えても語彙力で全然気にならない。
    それを探すのが面白い

    読者の思いをそのまま書いてみたりする事で見ぬかれた感覚になる。

    言葉が誕生するずっと前から自然の物は存在していたのに、言葉が失われるとその自然現象さえもなくなってしまう。

  • やっっっっっと読み終わった〜〜〜!!!!!
    最初から「あ」が消えていて、徐々に一音ずつ減っていく面白い実験小説。なかなかのペースで消えていくんだけど、半分くらい音が消えるまではそんなこと一切感じさせないほどの、語彙力、文章力。おもしろかった
    筒井康隆一生ついていくねん

  • 世界から一つずつ音が消えていきながら、主人公たちが物語を続けていく、というこのプロットは作者の力量が如実に反映していて、筒井康隆という巨匠の底力を圧倒的に感じる、まさに伝説の書であろう、と。

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著者プロフィール

1934年大阪府生まれ。小説家。同志社大学文学部卒業。81年『虚人たち』で泉鏡花文学賞、87年『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、89年「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、92年『朝のガスパール』で日本SF大賞、2002年紫綬褒章、10年菊池寛賞、17年『モナドの領域』で毎日芸術賞。他の著書『時をかける少女』『家族八景』『虚航船団』『文学部唯野教授』『銀齢の果て』『聖痕』『創作の極意と掟』など。

「2019年 『深淵と浮遊 現代作家自己ベストセレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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