盆まねき

著者 :
  • 偕成社 (2011年7月9日発売)
4.18
  • (35)
  • (24)
  • (16)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 317
感想 : 50
5

身近なひとの死を、お盆という期にひとりの少女が考える。
それは、戦争でたたかって命を散らしたひとへのレクイエムでもあった。
深遠なテーマをやさしく素直な文章で綴った、児童書にしておくのは惜しいほどの作品。
後半、涙でほとんど文字が見えないほど泣いてしまった。
外国人にはとうてい理解できない、日本人のお盆の習慣。
理解できなくて良いのだ。日本人らしいからこそ、麗しいのだもの。
亡き人との魂の交流など、どうして言葉で説明できるだろう。
そしてそれが、明日からの生きる原動力になることなど。

親戚でにぎわう祖父母の家でお盆をすごすなっちゃん。
そこで、大人たちから聞かされる三つのお話しの楽しさと妖しさ。
ああ、そう言えば夏をこうして過ごしたなと、懐かしさあふれる場面だ。
この世の 【ふしぎ】に出会う、お盆はそんな特別な機会でもあった。
だが、それだけでは終わらない。
失われたひとと、そのひとを思って生きる家族たちの心の交流があるのだ。
ひとは二度死ぬと言う。
二度目がないように、わたしもいつまでも覚えていようと、あらためて思った。
やや長い、著者によるあとがきも必読。
フジテレビ賞受賞作品である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童書
感想投稿日 : 2012年8月3日
読了日 : 2012年8月1日
本棚登録日 : 2012年7月31日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする