身近なひとの死を、お盆という期にひとりの少女が考える。
それは、戦争でたたかって命を散らしたひとへのレクイエムでもあった。
深遠なテーマをやさしく素直な文章で綴った、児童書にしておくのは惜しいほどの作品。
後半、涙でほとんど文字が見えないほど泣いてしまった。
外国人にはとうてい理解できない、日本人のお盆の習慣。
理解できなくて良いのだ。日本人らしいからこそ、麗しいのだもの。
亡き人との魂の交流など、どうして言葉で説明できるだろう。
そしてそれが、明日からの生きる原動力になることなど。
親戚でにぎわう祖父母の家でお盆をすごすなっちゃん。
そこで、大人たちから聞かされる三つのお話しの楽しさと妖しさ。
ああ、そう言えば夏をこうして過ごしたなと、懐かしさあふれる場面だ。
この世の 【ふしぎ】に出会う、お盆はそんな特別な機会でもあった。
だが、それだけでは終わらない。
失われたひとと、そのひとを思って生きる家族たちの心の交流があるのだ。
ひとは二度死ぬと言う。
二度目がないように、わたしもいつまでも覚えていようと、あらためて思った。
やや長い、著者によるあとがきも必読。
フジテレビ賞受賞作品である。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
児童書
- 感想投稿日 : 2012年8月3日
- 読了日 : 2012年8月1日
- 本棚登録日 : 2012年7月31日
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