窓ぎわのトットちゃん 新組版 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2015年8月12日発売)
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本棚登録 : 2195
感想 : 185

「トットちゃんとソウ君の戦争」を読んだら、むしょうに読み返したくなり、「新組版」を購入。

読後は泣けてしかたがなかった。ほんの数年間だが、まるでファンタジーのようなこんな学校が、確かにあったのだ。それを戦争がすべて飲み尽くしてしまった。でも、この学園のことは、一番トモエらしい(と思う)「トットちゃん」の手によって、多くの人の心に刻まれることになった。出版から三十五年。学校をめぐる状況が良くなっているかは疑問だけれど、この本が何かの種をまいてきたと信じたい。

最初に読んだのは大学生の時で、帰省したら実家にあった。およそ本など読まない母が面白いと言うので、ベストセラーというのはすごいものだと思ったのを覚えている。生意気盛りの頃とて、斜に構えて読んだのだろうと思うが、確かに面白かった。その後、黒柳さんは好きな書き手の一人となった。

今読み返すと、トットちゃんもさることながら、お母さんの態度や行動のすばらしいことに感嘆してしまう。「規格外れ」のトットちゃんを、いつも変わらず信じて見守り、ごく自然に向き合っている。いやあ、わたしなど、とてもじゃないがその半分もできません。できないと言えば、1年生のトットちゃんのおしゃべりを4時間もニコニコと聞いていたという小林先生もすごい。こういう大人たちやトモエのお友達など、周囲の人たちの良いところを存分に引き出し受け取るパワーが、黒柳さんにはあるのだろうなとしみじみ思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ・紀行・回想
感想投稿日 : 2016年9月30日
読了日 : 2016年9月29日
本棚登録日 : 2016年9月29日

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