「トットちゃんとソウ君の戦争」を読んだら、むしょうに読み返したくなり、「新組版」を購入。
読後は泣けてしかたがなかった。ほんの数年間だが、まるでファンタジーのようなこんな学校が、確かにあったのだ。それを戦争がすべて飲み尽くしてしまった。でも、この学園のことは、一番トモエらしい(と思う)「トットちゃん」の手によって、多くの人の心に刻まれることになった。出版から三十五年。学校をめぐる状況が良くなっているかは疑問だけれど、この本が何かの種をまいてきたと信じたい。
最初に読んだのは大学生の時で、帰省したら実家にあった。およそ本など読まない母が面白いと言うので、ベストセラーというのはすごいものだと思ったのを覚えている。生意気盛りの頃とて、斜に構えて読んだのだろうと思うが、確かに面白かった。その後、黒柳さんは好きな書き手の一人となった。
今読み返すと、トットちゃんもさることながら、お母さんの態度や行動のすばらしいことに感嘆してしまう。「規格外れ」のトットちゃんを、いつも変わらず信じて見守り、ごく自然に向き合っている。いやあ、わたしなど、とてもじゃないがその半分もできません。できないと言えば、1年生のトットちゃんのおしゃべりを4時間もニコニコと聞いていたという小林先生もすごい。こういう大人たちやトモエのお友達など、周囲の人たちの良いところを存分に引き出し受け取るパワーが、黒柳さんにはあるのだろうなとしみじみ思った。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
エッセイ・紀行・回想
- 感想投稿日 : 2016年9月30日
- 読了日 : 2016年9月29日
- 本棚登録日 : 2016年9月29日
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