ひとりでカラカサさしてゆく

著者 :
  • 新潮社 (2021年12月20日発売)
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本棚登録 : 1817
感想 : 140
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誰もみな、雨の中「ひとりでカラカサさしてゆく」しかない、ということなんだろう。そこにはすごい諦念があるように思うのだが、荒んだ感じではないところが、著者の小説の特徴なのかもしれない。

長年の友人であった老人三人(男二人女一人)が一緒に死のうとするのは、まあ全くわからないわけではないけれど、なぜここまでショッキングな形(ホテルで猟銃自殺)なのか、納得できるような説明はされない。その波をかぶる周囲の人たちがいろいろ登場するが、特に誰かに焦点があたることはなく、共感を誘うような人もいない。断片的とも言える描写は、人生はそうそうわかりやすく変わったりしないという意味合いなのだろうか。もやもやふわふわとした読後感が残った。



オマケ
自死する三人のうちの一人知佐子さんが、「雨ふりお月さん」の歌詞について「子どものころ、お嫁にゆくのはお月さんだと思ってた」と話すくだりがある。そう!私もずっとそう思ってた。お嫁になんか行くはずのないお月さんをちょっとからかってる歌なんだと。曲調も詞も好きな歌で、この本もタイトルにひかれて読みました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の小説
感想投稿日 : 2022年2月25日
読了日 : 2022年2月24日
本棚登録日 : 2022年2月24日

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コメント 2件

niwatokoさんのコメント
2022/02/25

この作品すごく気になっているのですが、タイトルを見て、まったくたもひさんと同じく『誰もみな、雨の中「ひとりでカラカサさしてゆく」しかない、ってことなんだろう』と想像したら、なんだか怖すぎて手が出ないでいます。『荒んだ感じではない』ときいて、読んでもいいかなと思えてきましたが。やっぱりもやもやしそうな気もします…。
 そういう世代なんでしょうが、なんだかもう諦念というか、終わりが見えるような話が多い気がして、ちょっと気が滅入ります。しかたないんですが。

たまもひさんのコメント
2022/02/25

ほんとにねえ、小説とか読む人もどんどん高齢化しているせいか、自分がそういうのばっかり目に入るせいか、たそがれた雰囲気のものが多いような気がします。別にむやみに明るいのがいいとは思わないけど(むしろイヤだけど)、少しだけ元気になるようなのも読みたいかなと思ったりします。
江國さんのはやっぱり独特の世界で、淡々と乾いた感じ。ウェットな寂しさや悲しさはあまりなくて、そこが持ち味なんだろうなと思いました。

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