東京・下町の老舗古書店「東京バンドワゴン」。
大家族の堀田家に持ち込まれる謎を解き明かす、シリーズ第7弾。
基本的に年1冊、春に文庫化されているそうで、季節の彩りとともに家族やご近所さん、お仲間たちとの冬から秋への1年間が描かれている。
ちなみにこの巻は、TV化にともなうサービス(?)で夏に出たようですが・・・。
4つのお話の中では、特に「春」の章で、我南人さんのミュージシャン仲間である中川さんのために、みんなで芝居を打つシーン。真面目に不真面目というか、人を思って真剣に、優しい嘘の芝居をする。
でも、結局みんなわかっていて・・・。
他にも、
研人くんを思うお母さんの亜美さんのかっこいいことといったら!
おませなかんなちゃんと鈴花ちゃん、藤島さんとのやりとりなど、メインのストーリーの周りを固める小さな出来事の積み重ねに豊かな時間が流れていてうれしい。
サチさんが、それぞれの季節ごとの章の最後に孫の紺と言葉をかわした後のつぶやき。
そこだけ強調すると、まるで自己啓発本の一文のようで若干説教くさいと思われるかもしれない。
けれどいろいろな込み入った出来事が起こり、多くの人々が関わりおおごとになり、堀田家の人たちにより事情が解き明かされ、納得のいく結末に収束していく。
そんなやり取りのあとで、サチさんが言葉にすると重みを増すんですよ。根っこのない口先だけの言葉ではなく、しみじみと味わいがある。
もしかして、私自身が小さな経験を重ねてきて、事実や体験からくる(小説の中であっても)言葉の重みを以前より感じるようになっているのかしら?
心の細波が立ってこそ、凪のときのありがたみがわかるってもんですよ。(P117)
どんなに辛い、忘れたいような過去でも、それを思い出にできるような未来に向かって歩いていく。(P285)
若い人たちの明日への道筋を作ってあげるのは、あなたのような年寄りの仕事じゃありませんか。<中略>
そうして、あなたが背中を押せば、誰かがその道を進んで、その誰かがまた道を作ってくれます。(P352)
辛い出来事や失敗も気づきをもたらし、未来への糧にする。
いつか、自分がしてもらったことに感謝しながら、次の世代のために小さな足元を照らす光になれるよう、今を丁寧に、明るく楽しく暮らしていく。
時折立ち止まって自分のあり方を確かめられるように、手元に置いておきたい言葉の数々です。
- 感想投稿日 : 2014年6月20日
- 読了日 : 2014年5月18日
- 本棚登録日 : 2014年5月18日
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