母を失い病んだ雰囲気の一家に突然メタルヘッドが乗り込んできてそのメチャクチャな言動に翻弄されながら一家が傷から立ち直っていく物語、と書けばありがちなヒューマンドラマであり、細部のシーンもその類型を積極的に利用している感があったけれど、それでも全体としては相当わけのわからない映画に仕上がっていて、そこがよくもわるくもあった、という印象。
ドラマが求めるであろう人物像の移り変わりをはねつけるヘッシャーのキャラクター造形が見事で、ひたすら最低の人間を貫き通したところがこのわけのわからない魅力を支えている、といったところか。問題が一つ解決したかと思えば、その直後に大暴れしてトラブルを全部主人公におっ被せる、かと思えば主人公が決心して行動を起こした直後、主人公が惚れていた女とセックスしてしかも主人公がそれを目撃してしまう。話が全然収束しないように好き放題暴れて、最後まで全然収束させないで終わる。けれど収束する、という問題と解決の思考を持たず現在に生きようとし続ける姿勢がなんだかんだで主人公達を救ってしまう。無理がありすぎるんだけど、だからこそなんだか痛快で面白くも感じてしまいます。
とはいえ、なんというのか、シチュエーション萌え、キャラクター萌え映画以上になりきれてない感じで、痛快さを感じるかどうかも観る側に相当なところ任せきりになっているし、エンターテイメントとしては陰鬱な調子が延々続きそれすらも雰囲気のために過ぎないんじゃないのかというところが、どうしても人を選んでしまう。あとその人を選ぶというのがメタルと全然関係ないというところが(多分メタルが好きなら好きなほど、小道具としての扱いのぞんざいさが鼻につく)、なんだかなあと思う。枠組みは所詮ヒューマンドラマだからわけのわからなさで突き抜けることもできないし(というか無理矢理に解決させようとしている場面が目立つぐらい)、じゃあヒューマンドラマとしてはどうなのかというとこれよりも上手いものはたくさんありそうだな、という。手並みはそんなに鮮やかじゃないです。無骨さも含めて、雰囲気を楽しめる人向けというのがなんだか惜しい映画でした。
- 感想投稿日 : 2011年11月26日
- 読了日 : 2011年11月26日
- 本棚登録日 : 2011年11月26日
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