<私>の愛国心 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房 (2004年8月6日発売)
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感想 : 11
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 じっくり読んで考えてもらうような記事を女性雑誌に載せることはもはや出来ない。
 女性として今の日本に生まれた、という現状に疑問を抱くことなく、それを追認する雑誌。そのなかでどう振舞うのが自分に得か、という観点だけから関心の対象を決定する。そして、その対象を少しでも越えるものには、一切興味を示さない。
 彼女たちが『女の子らしさ』と思い込んでいるものの中には、文化的・社会的に押し付けられた人工的な『女の子らしさ』が多く含まれている。

 大胆にピアスの穴を開けたり、電車の中で平気で化粧をしたりするのは、外の環境を変えられないので自分の極めて私的な世界を限りなく拡張しようとの無意識の欲望から出てくる行為かもしれない。
 女性雑誌の読者もいまどきの学生たちも、『身の回りにしか関心が無い』という、ある種の新しいリアリズムに急激に傾きつつある。そしてそのリアリズムは「自分に起きた事を全て認め、その上で自分の特に気になる事だけに関心を持つ」という現状追認にしてあまりにも視野の狭い価値観や生き方、と定義したほうがいい。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 強迫観念を創出する要因
感想投稿日 : 2008年6月22日
本棚登録日 : 2008年6月22日

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