<私>の愛国心 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
3.09
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480061850

感想・レビュー・書評

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  • かまびすしい リアリスト やぼったい価値観  非常に狭量で刹那的な損得主義 自分に身近な問題への関心に基づく実用主義 萌芽 芽生え ネオリアリズム化による関心の自己への限定と過剰なまでの外への志向。

    生きづらさに社会化・相対化は無意味 
    →かなり同感

    抑圧的寛容 優位だと優しいが、敵対すると攻撃的になり ボーダーライン二極化された判断から、アクティングアウト(無関係な破滅的行動)  左右二分型スプリット

    問題への直面を避けるため、暴力と泣き、謝罪をする 
    テロには屈しないという気分を公明正大にし、秘書官や政務官が若者の問題行動にすり替えた。それは人質事件はテロか、イラクの民意は?という問題をスキップした。 戻る場所がないのに戻りたい 最大公約数的考え ボーダーラインへはリミットを設定し貫く。   自己正当化は自己欺瞞であり、安定のためにそれが悪事でも繰り返す ケーガン 標準を下げて 他罰的 イラクから手をひけ。 パブリックジャーナル 

  • 第二章
    自分以外はみんなバカ
    ・バカ系の書籍を読むときの大衆の心情は「あいつはバカで自分はバカじゃない」

    第五章
    自分が傷ついているから、その傷を癒すために相手の傷を癒そうとする行為は意味をなさない。両者は同じ立ち位置に置かれて第三者が監督者として立たなければ解決しない。

  • この本、2回読んだけど、私は彼女の考え方好きだな。

  • ◎外の環境は変えられないので、それならばと、自分のきわめて私的な世界を限りなく拡張使用との無意識の欲望から出てくる行為か。-清水真砂子


    ◎身の回りにしか関心が無いという、ある種の新しいリアリズムに急激にかたむきつつある。


    ◎自分に起きたことをすべて認め、その上で自分の特になることだけに関心を持つ。という現状追認にしてもあまりにも視野の狭い価値観や生き方、と定義したほうがいい。


    ◎「非常に狭量にして刹那的な損得主義」
    「自分にかかわりのある身近な問題への関心のみにもとづく実用主義」


    ◎個人としていい人で満ちた国であるアメリカが、国家としての意思、社会総体としての方向性を見せるとき、なぜか偏狭で思いつめたような攻撃性を見せることがあるー寺島実郎
    「抑圧的寛容」


    ◎つまり、自分が圧倒的に優位だと認識するときには相手に対して思いやりに満ちた態度をとることができるが、いったん自分に敵対する存在だとなると、異常なほどの猜疑心や嫉妬心を募らせる。


    ◎世界の警察官を自任していた頃のアメリカには、まだ「お節介者」なりの良識と自制心があったように思う。でもブッシュ政権にはまったくそれが見られない。「ブッシュ帝国」など強がってはいるが、まるで何かにおびえ、それをごまかすためにイラクを先制攻撃したとしか思えない。
    アメリカ社会全体が何かの強迫観念に取り付かれてしまっているのだ。ー矢部武


    ◎アメリカはもはや「弱い国」に同情もしなければ、「さあ、助けてあげよう」と一方的にお節介な手をさしのべることもしない。ただ、確信に満ちた静かな口調で、「もうほかの国々はアメリカのようになれないのだ、だから、黙って私たちに従いなさい」と最終通告を伝えるのみだ。


    ◎「支持しない」ではなく、「許してはならない」のがテロであり、それが世界の世論ではないですか。アメリカを同一に論じては気の毒。警棒と棍棒の区別がない。-田久保


    ◎では、どうすればいいのか。それが「リミットセッティング」だ。
    基本的には「たいがいのことでは相手を見捨てない」という基本的な愛情は必要だ。ただ、際限の無い受容、慈悲、共感などは問題を解決しない。そこで必要になるのは、「もうこれ以上はできない」「これ以上やってもらっては困る」と現実にできることのリミットを、具体的に示すこと。


    ◎境界例の人たちは、自分ではそう意図していなくても、他社を操作する「天才」なのだ。だから重要なのは、その操作には乗らずに、「あなたのことが嫌いなわけではない。でも、これ以上は私にはできないのです。」と一貫した姿勢をみせること。


    ◎今のアメリカの力はあまりに強く、これほどの「病める巨人」を治療できる精神科医は、残念ながらこの世にはいない。そのアメリカと付き合うためには、とにかくこちらがリミットセッティングすること。そうしなければ、早晩、相手の二分化に巻き込まれ、廃人のようになってしまう。


    ◎しかし、リミットセッティングはあくまで日本社会がある程度健康な場合の話。


    ◎「病める者は、さらに病める者と関わってあわよくば相手を立ち直らせることで、自分が救われることを願う」という「法則」がある。
    それにのっとれば、日本はアメリカとの関係を維持することに過剰に熱心になり、対等さを強調し、さらには「アメリカに忠告できるのは日本だけ」などといった幻想に耽るjことで、自分たちの失われた自己肯定感や傷ついた自己愛が修復されることを、どこかで期待している。


    ◎さらには、「日本にとってアメリカが特別な国であることは、言うまでもない」という常套句も、もう一度、その真偽を検証してみる必要がある。


    ◎さまざまな分野でも頻繁にやり取りするをする「取引先」であることは事実だろうが、それが即「とにかく特別」となるのかどうか、とくにリアリズムの立場に立つ人たちは、その特別さの論拠を示す必要があるだろう。


    ◎アメリカにたいして、その病理は強迫神経症だとはっきり診断を下した岸田秀。


    ◎アメリカがさらに強く無意識へと抑圧しているインディアン・コンプレックスを意識化し、分析し、克服し、そして日本に謝罪し、日本が内的自己と外的自己との分裂を克服し、アメリカに謝罪したとき、相互理解に基づいた、真の意味での友好的な日米関係が始まるー岸田

  • [ 内容 ]
    この数年、“ナショナリズム”をめぐる議論がかまびすしい。
    冷戦に代わる国際秩序が定まっていない上に、極東アジアでは「北朝鮮」という冷戦の産物が大きな比重を占めているからである。
    しかも、バブルの崩壊とグローバリゼーションに伴う「成果主義」や「市場原理主義」の浸潤によって、セーフティ・ネットが整備されないまま勝ち組・負け組への階層化が進み、社会の安定感は急速に失われつつある。
    国内と国外の要因が複雑に絡み合いながら過熱化する一方の言説を丁寧に解きほぐし、「愛国心」の行方について考える。

    [ 目次 ]
    第1章 「日本は変わった」のか
    第2章 自分以外はみんな「バカ」
    第3章 この国に生まれたるの不幸
    第4章 「帝国」の病理
    第5章 二つの「病」と日米関係
    第6章 治癒と愛国心

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

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    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  •  じっくり読んで考えてもらうような記事を女性雑誌に載せることはもはや出来ない。
     女性として今の日本に生まれた、という現状に疑問を抱くことなく、それを追認する雑誌。そのなかでどう振舞うのが自分に得か、という観点だけから関心の対象を決定する。そして、その対象を少しでも越えるものには、一切興味を示さない。
     彼女たちが『女の子らしさ』と思い込んでいるものの中には、文化的・社会的に押し付けられた人工的な『女の子らしさ』が多く含まれている。

     大胆にピアスの穴を開けたり、電車の中で平気で化粧をしたりするのは、外の環境を変えられないので自分の極めて私的な世界を限りなく拡張しようとの無意識の欲望から出てくる行為かもしれない。
     女性雑誌の読者もいまどきの学生たちも、『身の回りにしか関心が無い』という、ある種の新しいリアリズムに急激に傾きつつある。そしてそのリアリズムは「自分に起きた事を全て認め、その上で自分の特に気になる事だけに関心を持つ」という現状追認にしてあまりにも視野の狭い価値観や生き方、と定義したほうがいい。

  • 今の日本の状況を精神科医の立場で分析してある。
    「まえがき」と「あとがき」を読むと、なぜ彼女が発言を続けるのかがよくわかる。
    そうなのかと思える部分が多かった。


    作成日時 2006年11月02日 05:47

  • 愛国心とは何か、それを考えようとしたときに、「読みやすそうだから」という理由だけで手にしてしまった一冊。香山先生は、近年のナショナリズムの高まりを、現代日本人が抱える心の病みからきているのだとおっしゃっているけれど(と私は思ったんやけど)それだけじゃない気が私にはしてる。日本人の内側だけの問題じゃなくて、外側(国際関係問題)からの原因もあると思うのだけれど・・・でも基本的に、すごくなるほど、と思うところもあるし、読みやすくて、心理学的な面も持ち合わせてるので、一つの物事を考えるときには、いろんな面からその原因とかを探れるんやなっって学べました。

  • この本のタイトルからみて分類がマスメディアというのは適切か、という疑問があるかもしれない。しかしナショナリズムというものが共同幻想にもとづくものだとすれば、その幻想を作りだし媒介しているものとして当然にメディアといいうものの存在が立ち上がってくる。それゆえに分類はマスメディアとさせてもらう。
    本文の中では少年事件、石原新太郎発言、憲法といったものらが例示として出される。これらのことについて私たちにはある程度の前知識がある。それはとりもなおさずいわゆるマスメディアがそれらのことをこぞって取り上げたからである。
    香山リカはこのことについての批判をする。各事件はかなり早い段階でわかりやすい価値観への読み替えが行なわれて判断される。そのことによって本来あったはずのコンテクストは忘れ去られる。問題背景を探ることなしに伝えられた事件に対しては、好きか嫌いかという二項対立のみに還元されてしまうのである。確かに身近な感覚でものごとを判断してみるということ自体はいいことであろう。
    しかしその内容は吟味されなければならないものである。表面をなぞっただけの取り上げ方ではまずいのである。事件を吟味しない傾向を香山は、人々の最後の抵抗である という。
    社会の中で色々なことが起こっているが現実の生活、自己の周りには大した影響がないと考える人たち。社会のことは他人のこと、他人事感覚とすることで不安や不満を近づけないようにしている、そうできると信じているというのである。
    その結果あらゆる出来事は単純に処理される傾向になる。そこから愛国心というようなものも市民の中に出てくることになる。
    本書後半では香山のフィールドである精神科医としての社会分析がなされている。アメリカ、日本の思考パターンを読み解きその対処方を提示する。もちろんそれは医学からの言葉なのでダイレクトにイコールで結ぶことはできないが多くの示唆をしてくれる。
     大きな転換点に立つ私たち、対外的には軍事、内部では精神医療、これらは市民にとって決して他人事ではなく自分たちの問題であるはずなのだ。そのときにどのように考えていくべきかの決定はメディアによる適切な情報提供によってなされる。
     自分がどこへ向かっていくのか、他人事ではなく自分の責任として、そのことを考えさせてくれる一冊です。

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著者プロフィール

たくましいリベラルとして、右傾化する政治状況から現代社会の病理まで、メスをふるう行動派知識人。1960年生まれ。精神科医。立教大学現代心理学部教授。『若者の法則』『ぷちナショナリズム症候群 若者たちのニッポン主義』『生きてるだけでいいんです。』『弱者はもう救われないのか』『「悩み」の正体』『リベラルじゃダメですか?』ほか、著書多数。

「2017年 『憲法の裏側 明日の日本は……』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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