デパートを発明した夫婦 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (1991年11月18日発売)
3.69
  • (16)
  • (34)
  • (36)
  • (1)
  • (2)
本棚登録 : 297
感想 : 42

私が生まれる前の話だが両親はデパート勤めだったようで、今度、息子が就職するのだけど、父が亡くなった年にデパートに入るのが決まったってのは、なんだか出来過ぎな話だな。
そういう訳で、この本のさわりみたいな記事が夕刊に載っていたので買ってみた。
19世紀半ばにデパートのスキームと商売上の戦略を作り出したのが、本書で紹介される天才商人ブシコーとその夫人。大のデパート好きと思しき仏文学者の筆者が本人の楽しみのために書いたって感じの筆の滑りようで、19世紀半ばにパリに産声をあげた世界初のデパート〈ボン・マルシェ〉における集客戦術や今となっては当たり前の取組みに初めて日の目を見せたブシコー夫妻の着想と実行力について、ゾラの「ボヌール・デ・ダム百貨店」の創作ノートなどから積み上げる。
筆者が言うように、かつて子どもにとっては“デパートへ行く”というのは遊園地に行くとかと殆ど同義語で、屋上の遊園地や大食堂のお子様ランチの記憶は消えることが無い。買い物の記憶はあまり残ってないのだけれど、デパートの包装紙で包まれた商品を持って歩くささやかな幸福感や優越感は確かにあったような。屋号に籠められたブランドへの誇りが作り出す消費と非日常の世界、私らの子どもの頃はそれがデパートだったよね。
そんなデパートの存在感が薄くなったこの頃。昨日の朝刊にも名古屋の松坂屋が閉店するという記事が載っていたが、そうしたデパート不況の時代に、そこへ就職する意気や良し、店長目指して人生を切り開けと思う、親である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2010年読んだ本
感想投稿日 : 2010年2月27日
読了日 : 2010年2月22日
本棚登録日 : 2010年2月27日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする