言葉の園のお菓子番 見えない花 (だいわ文庫)

  • 大和書房 (2021年3月12日発売)
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本棚登録 : 905
感想 : 88
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この作者さん、「三日月堂」「月光荘」「紙屋ふじさき」「ものだま探偵団」と読んできて、また別のシリーズに行ってみる。

今回の題材は「連句」。
勤めていた書店の閉店で職を失い実家に戻った一葉が、亡き祖母の遺品から連句のノートを見つける。亡き祖母のことを知らせに連句の席を訪れた一葉は、メンバーに迎え入れられ連句に参加することになる、という出だし。

なつかしき春の香の菓子並びけり
 のどかに集う言の葉の園

連句とは全く知らなかった世界だが、最初の句からしてほんのり良かった。
次々と出て来る連句のルールがさっぱり頭に入らないのは困ったものだが、それでもなかなか興味深くはある。
『連句を続けていると月と花は別格に思えてくる。月がいつも空にあるのがいいんです』『月は満ち欠けがあるから月単位の時間を感じられるし、花はやっぱり生きているからかな』なんてとてもよく分かるが、年を取ればこそか。

連句以外にも、おいしそうな季節のお菓子や東京の色々な町の風情が描かれ、パンや苔や雑貨の話になったり、それらのお店を流行らすためのポップづくりの話になったり、飽きずに読める。
更には、連句のメンバーの年齢・性別・職業などが異なる人たちが、雑談の中では恋や男女の機微について語ったり、世俗的な句に飛んでみたり、そのあたりは森羅万象を描く連句の楽しみ方に似て、ここもまた面白く読めた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2023年読んだ本
感想投稿日 : 2023年9月9日
読了日 : 2023年9月7日
本棚登録日 : 2023年9月9日

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