分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか 精神と物質 (文春文庫 た 5-3)

  • 文藝春秋 (1993年10月9日発売)
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利根川進氏の本。私が好きな彼の言葉に「一人の科学者の一生の研究時間なんてごく限られている。研究テーマなんてごまんとある。」がある。ちょっと面白いくらいのことにうつつを抜かしてたら、一生なんてあっという間。そんな彼の研究に対する考え方に触れられる1冊。

【本来ないものは発見できない】
「Q.研究にはなんでそんなに時間がかかるのか?」
「まず何より間違った実験をやるから。研究なんて、大部分は間違ったことをやっているんです。実験は失敗の連続です。下手すると2年も3年も間違った方向へ進んでします。中には一生間違った方向に向きっぱなしという人もいる。結局、なにものをいくら一生懸命探しても、絶対ないんですよ。」

「Q.どうすれば間違った方向にいかずに済みますか?」
「注意深い思考はもちろん必要だけど、良く考えれば分かるというものでもない。頭が良ければ分かるわけでもない。結局、運とセンスだろうね。」

とやや突き放した様な言い方をするけれど、こんなことも言っている。

「大切なのは、熱心にモノをみる、考えるということですね。一週間かけてやった実験が失敗とするでしょう、そしたら、その一週間無駄にしたくないから、転んでも藁ぐらいつかみたいと思って、一生懸命見るわけ。なんでこれが失敗したんだろうと、考えて考え抜く。観察と考察にかける集中力ね。これが大事なんです。」

【大切なことは確信を持てるか】
「サイエンスというのは細かいことをほじくり出したら研究対象なんていくらでもあるわけです。だけどその大半は、そういったら言い過ぎかもしれないけれど、どうでもいいことなんですね。だけど、大半の学者は、何が本質的に重要で何が重要でないかの見分けがつかないから、どうでもいいことを追いかけて一生を終えているわけです。彼らはサイエンティストを自称して、サイエンスを飯の種にしているけれど、サイエンス側から見たら、いてもいなくても関係ない人たちなんですよ。」

痛烈だが、これはビジネス側にしても同じことが言える。大したことない仕事を大したことある様に、自分の領域を侵されない様に必死に守っている人をたくさん見るなぁ、と。

「サイエンスでは確信することが一番大切なんです。自分が確信していることなら、いつかみんなを確信させられます。ただ、人によっては簡単になんでも確信してしまう人がいるけれどあれは駄目。自分自身に何度も何度も本当にそうなんだろうか、絶対間違いないんだろうか、と問い直して、いやこれで絶対に間違いないと時間をかけて、徹底的に問い詰めた上での確信ね。」

一つ言えるのは自分の頭でちぎれるくらいに考えること。そのために必要なのは熱心さと考えるための仕組みづくりの大切さをこの本か受け取った。
仕事した結果得られる成果の本質を見つめて、今日より明日に、よりよい価値を創造していきたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 生物学
感想投稿日 : 2019年1月20日
読了日 : 2019年1月18日
本棚登録日 : 2019年1月20日

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