五年の梅 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2003年9月28日発売)
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本棚登録 : 339
感想 : 60
5

2016年、24冊目です。
表題作「五年の梅」は、心に染みる作品だった。
山本周五郎賞受賞作品です。表題作を含め5編の短編が収められています。
描かれているのは、江戸時代の世を生きる様々な人々です。
彼の作品の主人公たちの生き方には、決して華やかさなどありません。
むしろ不器用に、もっと言えば無様に生きているのです。そんな男や女の中に、
消え残るかのように灯る人としての矜持を見る気がする。最後まで人を見捨てない
暖かさのような気もします。器用に生きられないからこそ、そういった人間だからこそ、大事に守っておかなくてはいけない心情があるのだという気にさせられます。
それを失わなければ、人として生かされている意味があるということだろか?
それにしても、主人公へというか市井で生きる人に対する愛情を感じる作品集です。
「小田原鰹」という作品は、最後までなんで小田原鰹なのか分かりませんが、
主人公”おつね”が理不尽な夫婦生活の中で決して荒ぶことなく生きる心情には、
感情移入してしまいます。また小品「蟹」も、主人公の女性が、生き直す希望を
見出す様が素敵な作品でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 乙川 優三郎
感想投稿日 : 2016年4月23日
読了日 : 2016年4月21日
本棚登録日 : 2016年4月23日

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