黙過 (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店 (2018年4月21日発売)
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本棚登録 : 355
感想 : 61
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冒頭から医局内の権力争いがみえ隠れする中での人工移植、命の優先順位の話が続くと思いきや、急にベットから動けないはずの患者が病院から忽然と消えてしまう。病院でこんな事あり得ない、と思うままに第一章が終了。続いて明らかに全然違う話が続く。
あれ?短編小説だったのか、失敗した。と思いつつ、第一章のテーマが重いだけにもっと掘り下げて欲しいと若干消化不良のまま第二章へ。第二章はパーキンソン病の話だが詐病で、家族にも嘘をつき続けている話。詐病は兎も角として、家族が進行性の病に侵され次第に身体の自由が奪われていく時に、家族はどう支え合うのか。考えさせられる。
ここで解説を読み、実は4つの短篇が最後の究極の選択ですべて繋がる構成と知り、命の天秤、不正疑惑を読み進む。
医療技術の進歩に伴い、その技術が人の命を救えるとしても、その技術を患者に施すかは別の話である。また、その命が自分の大切な人の命、他人の命の場合、果たして同じ選択(判断)が出来るのか。人の命を救うために人間と動物の命の軽重を人間が決めていいのか。もし動物の臓器が移植で自分や家族に使われて助かるなら、動物の臓器で生きるのか。
一言では答えが出せないことばかりだが、医療技術が進歩し、人間が長く生きることを望めば、遠からず同種の事態に直面することはあると思うので、自分なりの判断ができるようにしたいと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 保健・医療・介護関連
感想投稿日 : 2020年12月30日
読了日 : 2020年12月28日
本棚登録日 : 2020年12月28日

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