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感想・レビュー・書評
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読んだのは新潮文庫だけど、書影がなかったのでこちらを登録。
さて、今さら引用するのも憚られるほど冒頭の一文が有名な作品である。しかし、冒頭が有名な割にはその内容はあまり知られていない。冒頭しか知らない人が多い理由は、冒頭しか学校で教わらなかったから。内容は学校では教えることができないからだ。『雪国』は不倫小説だからである。
文筆家の中年男・島村が雪国(越後湯沢)に赴き、芸者の駒子と逢瀬を重ねる物語だ。駒子は本気で島村を愛しているが、島村はゆきずりの愛と割り切っている。島村は駒子とずるずる関係を続けた挙句、葉子という別の娘にも惹かれていく。その間、東京にいる妻子は放置しているが、妻と離婚して駒子と一緒になる気は毛頭ない。
…という、冷静に読むと微妙に腹が立ってくる物語なのだが、文章としては本当にずるいくらい美しい。冒頭のたった一文で読者を異世界に誘う手腕、映画のワンシーンのような夜汽車の車窓風景、三味線や縮など「和の美」を情緒たっぷりに描いたかと思えば、これ以上書いたらポルノというほど際どい性描写もあり、まさに「大人の読書」を満喫できる。子どもには分からない世界、と言ってもいい。
川端康成は、ノーベル賞の賞金二千万円を全て骨董品の購入に使ってしまうほど、
「日本の美」に強烈なこだわりを持つ作家だった。(正確には、賞金をアテにして総額一億円の買い物をしたというのだから恐れ入る)そういう狂気に近い美意識を持った人が、十年かけて書いた作品である。この小説を母語で読めるというのは実に幸福なことだ。…と、最後の一文を読んで思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
無為徒食の男 島村と、芸者の駒子、瞳と声が美しい葉子が中心の話。濃やかな情が、昔ながらの雪国の自然に象徴される様に描かれている。読みながら浮かぶのは、幾年か過ごした山奥の雪深い小さな町で、その所為か私も島村の様な旅愁を感じた。そして駒子の三味線を聴いた様に、美しい文体に涼しくなり、腹まで澄み通っていく様だった。島村は現実を鏡に映った夢幻の様にしか見ていないが、駒子は透明な揺れ動く心の襞で現実を包んでいた。全てに共感する訳では無いが、最後に見た駒子は壮烈で美しかった。
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自分は葉子が好きかなあ。
一途なところがすごくグッときます。
ただ、それぞれが悲しみを抱えて生きているのが何とも切ない気持ちになる。
雪景色に映える心にあいた穴のような寂しさがある気がする。
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ため息の出るような、文章が描き出す美しさ。
でもその言葉が紡ぎ出すのは、虚しさや儚さや閉塞感。そしてその中に時折燃えるような何かがちらつく。
冷静に考えると、教科書に載せてもいいような道徳的なストーリーではないのに。それでも人びとの心を魅了する作品なんだな。
同じ箇所を何度も、時には声に出しながら繰り返して読んでしんみり味わいたくなる作品。 -
BSプレミアムでドラマ化されることを知り、冒頭の有名な文句以外全く内容を知らなかったので購入しました。
主人公島村の視点で事細かにその情景の描写で物語が進みます。描写は細かいのですが物語の進行は抽象的で、登場人物は変わらず場面がいつの間にか変わっていることもあって、あまり普段はしないのですが先にネットであらすじを確認して読んでしまいました。
駒子と島村の取り留めもない話題と微妙にかみ合っていない会話がなんとも言えない。
島村から見て清潔な印象の駒子。自分には奔放な印象を覚えるだけだが観察しているだけでいい女性なのでしょう。駒子は島村を引っ掻き回そうとしているようだが相手しない島村にやきもきしてさらに空回りしている悲しい状況。
ドラマの美しい映像を期待しています。 -
非常に文学的で正直ちゃんと理解できていないと思う
徒労という言葉が多用されており、全体に虚無感が漂う
特に主人公は自分をひどく冷めた視線で見つめている虚無的な人物
その主人公を通して登場する2人の女性や自然の美しさが描かれる
女性たちの献身的な振る舞いも多くが徒労に終わり、主人公にとってはそれが儚さと見えて美を感じさせる -
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」雪国で繰り広げられる、登場人物それぞれの愛と悲しみを美しく表現した文学作品。
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https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00197447 -
綺麗な表現が多いのだけれど、物語としてどう良いのかはいまいちわからない。
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同級生に好きな映画の話をしても誰にも分かってもらえないから学校では人気のテレビ番組の話題に話を合わせて、家でこっそり映画鑑賞記録をつけていた。ところが偶然知り合った年上のお兄さんと好きな映画が同じと分かって嬉しくて自分ばっかり話してしまって、みたいな気持ちになる話だった。