いまの日本が気に入らないから変えてしまおうと思う。
変える力は歴史や伝統にあると思い過去に遡る。
と、そこには「天皇」がいる。よし!これだ!と思いつつも、天皇はいまに現前している。もう現前しているのならじつは日本はもう立派な美しい国じゃないの、と思う。
じゃ・・、変えようと余計なこと考えないほうがいいんじゃないか。
で、変えることを諦めればいまのあるがままを受け入れたくなるわけで。
んで、あるがまま受け入れて余計なこと考えないならば、頭は必要なくね?。頭が必要ないならからだだけが残る。からだの姿形だけでも美しくしようと思う。でも死ぬときは死ぬ。そんなときは美しい姿形をした国を守るために潔く死にましょう。
こうした幾重にねじれた思いと思想の絡まりを個々の思想家と内容を紹介しつつ近代日本の右翼思想の歩みを描いた内容。
出てくる思想家は多岐に渡る。
大川周明。石原莞爾「世界最終戦論」、北一輝の「日本改造法案大綱」。安岡正篤と大正教養主義。権藤成卿の自治主義や三井甲之の「たなすゑのみち」。佐藤通次の身体論。
全く共通項や関係のない思想家や思想同士が結びつき絡み合い縺れあい捻じれあう。これらが「天皇」という接着剤でくっ付き。ときに円滑油のような働きをしつつ、ひとつの渦となって日露以後から大正・昭和、1945年8月15日を向えるまでの時代に作用してしまった。
躓きとしての「天皇」。そのパラドックスと右翼思想の流れをつぶさに記述した著者の手腕。お見事です。
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カテゴリ:
歴史
- 感想投稿日 : 2014年6月4日
- 本棚登録日 : 2014年6月4日
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