華竜の宮(上) (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房 (2012年11月9日発売)
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感想 : 80
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ホットプルームと呼ばれる大規模な地殻変動によって、太平洋海底が大きく盛り上がり、その影響で海面が250メートル以上上昇、陸地の多くは水没した(リ・クリステイシャス)。本作は、"リ・クリテンシャス" と呼ばれる地殻変動から数百年後の変わり果てた地球の物語。

陸地が足りなくなった人類は、DNAを改変して海上生活に適した種族(海上民)を生み出していた。海上民は、魚舟と呼ばれる海洋生物(サンショウウオのような生物)と一緒に生まれ、成長した魚舟は海上民の居住空間・移動手段となった。乗り手(一緒に生まれた海上民)を失った魚舟は、やがて人を食らう狂暴な怪獣("獣舟")へと変異し、大きな社会問題となっていた。

海上民の多くは、陸上民が支配する国家に属さず(タグなし)、税金を払わずに貧しくも自給自足の自由な生活を謳歌していたが、深海性クラゲを媒介した致死性ウイルス〈病潮〉の被害を避けるには、陸上民が製造・管理するワクチンの定期接種が必要で、このワクチンは闇ルートで取引されていた。

陸上民の国家(汎アジア連合)は、増えすぎたタグなし海上民の船団を海上強盗団と見なして虐殺する暴挙に出た。国際社会もそれを黙認。正義感溢れる日本の熱血外交官 青澄公使は、この暴挙を何とか阻止しようと奔走する。巨大なタグなし船団のオサ、ツキソメの体の秘密、そして、新たに判明した、人類滅亡に繋がる更なる天変地異の予測も絡んで…。

魚舟や獣舟の設定があまりにも過激。まあでも天変地異後の世界の生物相は全く予想できないから、何でもありという気もするな。

なお、青澄のパートは、青澄のアシスタント知性体(AI)マキの視点で語られていて、青澄を理解しサポートするマキの冷静だが愛情溢れるキャラがいい。こんなAIにサポートされたい!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF・ファンタジー
感想投稿日 : 2023年7月20日
読了日 : 2023年7月18日
本棚登録日 : 2023年7月16日

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