"大躍進" 計画は、「スペース・テザーの〈雲〉で宇宙ゴミ衝突に擬装した事故を増やし、現在、人工衛星を運用している国家の宇宙開発に取り組む意欲を削いでい」く一方、逆に「北朝鮮が宇宙開発へのさらなる投資を発表」し、「優秀な科学者、エンジニアを集め」て北朝鮮(とその同盟国)が宇宙開発の主役に躍り出よう、とする北朝鮮の策謀だった。そしてそのメインミッションは、「四万あるスペース・テザーを全て投入して、低軌道を巡る二千個の人工衛星を、同時に、全て地球に叩き落とす」"低軌道虐殺" だという。
なんて壮大な計画! しかも北朝鮮に魂を売った日本人エンジニア(白石)が一人で遂行しようというのだがら恐れ入る。まあ、でもソフトウェア技術を駆使すれば一人でも何とかなってしまいそう、と思わせるものはある。
下巻では、スペーステロとの激しい攻防が繰り広げられる。スリリングで無駄のない展開、なかなか面白かった。ただ、話を盛り上げるためか、わざとらしい展開になっちゃってるのが少し残念。関口・黒崎がせっかく(もはやテロリストの)ジャハンシャ博士を追い詰めながら、黒崎が(関口に人殺しはさせられない、とか言って)邪魔してジャハンシャをまんまと逃がしてしまう展開は、さすがにあり得ないよな。和海主導の作戦でフィナーレを飾ろうという著者の魂胆がみえみえで、ちょっと白けた。
特に意味はないのだが、タイトルにもなってる「オービタル・クラウド」が出てくるセリフを二つほど。まずはチームシアトルのリーダー、クリスのセリフ「四万のスペース・テザー……。まるで、軌道の〈雲〉ね」。そして、地上の管制官がパイロットに向けて叫ぶセリフ「こちら、コントロール。マドゥ、見えたぞ。雲だ。軌道の雲だ!」
- 感想投稿日 : 2021年12月7日
- 読了日 : 2021年12月7日
- 本棚登録日 : 2021年12月5日
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