異形の将軍 下: 田中角栄の生涯 (幻冬舎文庫 つ 2-9)

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  • 幻冬舎 (2004年2月1日発売)
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ロッキード事件は、巷間言われているように、やはりアメリカの陰謀絡みだったようだ。そして、日本の政治もいつか金権政治からだ脱却しなければならない、そのターニングポイントにおいて、最も派手に金集めをしていた田中がスケープゴートにされた、というのがことの真相のようだ。実際のところ、当時は「カネを集めることこそが政界で実力を測る最大の尺度」だったという。

下巻から、田中の人となりを表す言葉を拾ってみると、「昔の女の縁者が田中を頼って来たこともある。田中はその人達を全部面倒みた。責任回避などは絶対にしない人だった」、「勘がいい、人情味、浪花節的、せっかち、短気、わかったの角さん、政策に強い、行動力、コンピューター付きブルドーザー、汗っかき、そして金権。また天才的、勉強家、呑み込み、気さく」、「物事にこだわらない陽気な人物」、「大勢の人々を統率するために欠くべからざる、細事にこだわらない鷹揚な性格」、「法律の読みかえの名人」(「法律は人間が生活の便宜のために使いこなすもの」)、「強運の持ち主」、「何事についても、具体的な発想、知識では、役人が及びもつかない蓄積にうらづけられた力量を示す」、「田中政治とは、一言でいえば合理主義だね。そして得意技は再建だ。」、「頭の回転は速いし、人間は陽気だし、元気はいいし、異色の政治家だな。とにかく行動力は抜群だね。しかもものを見たらすぐに急所がわかる人間」、「税金のプロ」、「一般的な問題よりは個別的な問題、抽象的な問題よりは具体的な問題を得意とする人物」、「豪毅の精神とはうらはらの、脆弱な一面」、「循環気質で、躁と鬱との間をゆるやかに循環するタイプ」、「欠点は、人のよさ、気の弱さ」(冷徹になれない弱さ)、となる。

日米繊維交渉、日中国交正常化、日本独自の石油ルートの開拓交渉など、田中でなければ達成出来なかったであろう大きな成果の数々は、彼がいかに卓越した政治家だったかを示している。田中角栄の偉大さが分かる一冊だった。

(金権政治の部分を除けば)閉塞感のある現在の日本にこそ必要な政治家なんだろうな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 伝記・史伝・自伝
感想投稿日 : 2020年6月26日
読了日 : 2020年6月24日
本棚登録日 : 2015年10月4日

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