人生の甘美なしたたり (角川文庫 た 5-19)

著者 :
  • KADOKAWA (2002年6月1日発売)
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感想 : 6
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「人間は何のために生まれてきたと思う?おもしろいことを言って、みんなで笑うためよ」
日本を代表する作家であり大阪を最も代表する作家であった田辺聖子さんが、先週6日に92歳で亡くなった。「カモカのおっちゃん」などエッセイの言葉や小説の中で出てくるセリフが好きだった。大阪の普通のおっさんやおばはんが使うような平易な言葉で、こんなにも人生の機微や人間の本性を突き刺すような深い言葉を紡いだ作家は彼女以外にない。彼女の言葉には何度も笑わされ教えられた。樹木希林さんにつづいて、人生の大先輩がまた一人いなくなった。私の本棚に残る4冊の彼女の本から、箴言集「人生の甘美なしたたり」を再読。10数年前に買った本だが、面白くてまた一気に読んでしまった。数多くの素敵な言葉の中から一部を抜粋紹介。

●男と女
・「恋愛の究極は、手ェも握らんとこへ還る」
・男でも女でも、好色な人は、毎日、じつに楽しそうに生きている。
・セックスはアタマとココロである。セックスは、あたまのよさと感受性の問題だ。
・不倫は人生の香水である。時々人生にふりかけてたのしむ。
●女とは
・女が男からいわれる一番うれしい文句は、「寝ませんか」というくどきである。
・女はみんなバクダンである。
・女の子の集まりがながつづきするヒケツは、「KINTAMA」のひとことに尽きる。つまり、「協調すれども介入せず」ということ。
・於女乎一つ引っ提げてれば、一生食いっぱぐれないなんて、女とは何て、いいもんだろう、という真理。
●男とは
・マジメな男が浮気することは矛盾するようであるが、マジメだから浮気になり、本気にならないのである。
●生と死
・泣くか笑うか迷ったときは、笑うほうがいい。
・人生は最後にはなんとかなるものである。
・人生、酒飲んで×××しとれば、それだけで大収穫である。
・そもそも幸福の実態は、日常の細部にある。
・「すべてナアナアがよい。整然とか生粋とか純潔はいかん」
・「神サン」は理不尽なのである。
・血は水より薄い。
・「逃げたままトシとったらええやないか、逃げ切ったら勝ちや」
●世の中さまざま
・人間、カシコもアホもみな同じ。
・楽に生きている人間は好もしい。
・本来、民主主義というものは女くさいものである。
・人間の歴史を真に動かすものは、その網目に洩れたる無数の塵芥、雑魚どもである。
・たのしみ、というのは、やっぱり「人間」に尽きる。
・善意と思い込んでる無神経は一番かなわない。
・「アホにアホいうもん、ほんまのアホじゃ」
・非行は健康の素。
・社会が成熟すれば美意識は多様化する。
・「すべて物ごとも言葉も、平とう考えて平とういいなはれ」
・何でもしたい放題したほうが、人生では長生きする。
・「血ィのつながれへん者同士が、仲よう家族みたいにしてる、いうのこそ最高の文化や」

十数年以上前に読んだ時より今のほうが、ずっと味わい深く面白く読めた。
はんなりしたやわらかい大阪弁につつまれているが、よく読むと辛辣で凄い過激な言葉も。

最期にもういちど、新聞に載っていた言葉。
「人間は何のために生まれてきたと思う?おもしろいことを言って、みんなで笑うためよ」

おせいさん、たくさんのおもしろい言葉ありがとう!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 随筆・エッセイ
感想投稿日 : 2019年6月20日
読了日 : 2011年9月16日
本棚登録日 : 2019年6月20日

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