万葉集を英語にしようという’無謀な’試みの本。
無謀な、というのは著者も感じており、7世紀の日本語独特の表現や感性を現代英語にすることの限界を幾度となく論じており、それを通して原文の美しさを伝えている。
英語はどうしてもストレートになりがち、説明がちで、「久方の 天より雪の 流れ来るかも」を「Is this snow come streaming from distant heavens?」と疑問形にしたり(p69)、「不尽の嶺を 高み恐み」を「Because of Mt. Fuji’s lofty heights」としたり(p43)、そうしたところから古文の、そして和歌の美しさを改めて感じさせてくれる。
中には行き過ぎと感じるものもあり、天皇御製の「我こそは 告らめ 家をも名をも」を「l will tell you my home and my name. 」としたり、「夜道は吉けむ」を「the night road should be good」としたりは簡略化しすぎでしょとか。
「玉裳のすそに 潮満つらむか」をcouldやI wonder ifを使うとわざとらしいと言ってあえて「Can the tide - ?」と簡単な質問形式にしたとあり、著者の趣味のよう。著者がスタンフォード大教授ということでアメリカ英語だからこんなストレートなのかなあとか思った。言語ごとの独自の感性とか文化があり、それは代替不可能なのだという、文化人類学とか1984で学んだことを改めて感じさせてくれた。
それはそれとして、英語でももっと婉曲で奥行きを感じさせる表現はもっと可能だと思う。その辺もっと勉強して語彙の幅を広げたい。万葉集自体もかなりはまりそう。
- 感想投稿日 : 2022年3月29日
- 読了日 : 2022年3月29日
- 本棚登録日 : 2022年3月27日
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