千里眼の復活 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2021年4月23日発売)
3.78
  • (19)
  • (25)
  • (19)
  • (3)
  • (3)
本棚登録 : 258
感想 : 23
4

千里眼シリーズ12年ぶりの新作。自分が読書に本格的にはまるきっかけとなったシリーズなので単純に嬉しかった。そしてこのシリーズならではのスケールの大きさと、ハチャメチャ加減もこれまで通りで、どこか懐かしく、そして楽しく読めました。

自衛隊基地から盗まれた2台の最新戦闘機。その謎を追っていく主人公の岬美由紀。そして事件は日本を未曽有の危機に陥れる事態に……

岬美由紀は元戦闘機パイロットで現臨床心理士という経歴の持ち主。卓越した動体視力と心理学の知識が相まって、普通の人間では反応できない相手の瞼の動きや、表情筋の変化などを読み取り、相手が嘘をついたことを見破ります。その能力からついた異名が「千里眼」

そんな美由紀を主人公に据えたシリーズは、これまでも日中戦争開戦の危機だったり、イラク戦争を舞台にしたりと、ワールドワイドなものも多く、アクション、カーチェイス、戦闘機を操っての空中戦と、ハリウッド映画顔負けの場面も多かったのですが、この新作もその原点回帰を思わされる。シリーズのお約束ともいうべき、こうしたシーンがふんだんに盛り込まれています。

なおかつ今回は危機のスケールも半端ない。盗まれた戦闘機による日本への断続的な攻撃。国土は誇張抜きで焦土と化し、死者は戦争並みに膨れ上がる。現代の日本を舞台にして、ここまでめちゃくちゃできるのか、と読んでいて少し唖然としてしまいました。

でもこのめちゃくちゃさというのは、ただただ荒唐無稽というわけではない。軍事や政治、世界情勢から経済、そして時事的な話題までを反映しているため、もはやファンタジーやSFのような展開も、でも全くの絵空事とも思えない、と受け入れられる。

今回もコロナ禍の政治をはじめ、自衛隊内でのいじめ、海外による日本領土の購入、はたまたチー牛と、国際的な問題から、ネットスラングまで取り込まれ、このシリーズだからこそできるとんでもない展開が描かれます。12年の空白でも変わらない、岬美由紀の活躍、そして彼女の正義心に酔いしれる一冊でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 冒険・スパイ・アクション
感想投稿日 : 2021年5月25日
読了日 : 2021年5月19日
本棚登録日 : 2021年5月19日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする