絶望の国の幸福な若者たち

著者 :
  • 講談社 (2011年9月6日発売)
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感想 : 449
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 図書館より

『だから日本はズレている』の古市さんの著作で『だから日本はズレている』内で言われていたキーワードもいくつか見られます。

 面白かったのは第一章の「若者」がいつのころから社会的な概念として誕生し、そしてどのようにその立ち位置を変えてきたか、ということ。ビックリするほど昔の大人たちと今の若者批判が似通っていて思わず笑ってしまいそうでした。今も昔も大人たちは若者に対し、ある種の似たような期待をし続け、そして裏切られ続けているのですね。

 そうした若者論といっしょにこの本内で語られるのは、日本という国家のことです。成熟し先進国の一員となった日本の限界もこの本では語られているように思います。共通の倒すべき敵を失い、叶えるべき大きな目標がなくてもインフラの充実で生きていける、そうなると自分の身の回りのことを充実させ満足するしかない。国家としては完成形の様な気もしますが、それが絶望の国の正体だと言われるとなんだか複雑な気持ちになります。

 著者は最後に一人一人が生きられるなら日本が終わってしまってもいい、と書いています。ただそれは日本というインフラを過小評価しているような、また日本というインフラなんかなくても生きていける、と自分たちを過剰評価しているような気もします。

 ただ自分が臆病なだけかもしれませんが、自分も含めた1億人以上の人が日本というインフラを頼って生きている以上、絶望の国に簡単に絶望できない気がします。かといって何か行動ができるかと言うと、その手段は非常に限られているわけで結局は徐々に沈んでいく日本を見ていることしかできないような気もしますが…

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教養・歴史・ハウツーなど
感想投稿日 : 2014年9月3日
読了日 : 2014年9月2日
本棚登録日 : 2014年9月1日

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