これぞ大スペクタクル! 細かいことはきにしちゃいけません(笑)
散々呪術に対して、様々な科学的な見地を加えたり、トリックの検討をしたりしてきたのに、後半はそんなの関係ねえ! とばかりの超常的な幻術や、催眠のオンパレード!
テレビ局を舞台にしてのスプラッタや大立ち回りは良くも悪くもB級ホラーのようで、良いキャラだった主要人物たちも、容赦なく退場させられます。三巻途中まであった、リアリティとフィクションの間をギリギリで綱渡りしているような感覚は、粉々に壊されます。
三巻での超展開は、レビューを見た感じでは賛否両論みたいです。「人が死にすぎ」「現実味が一気になくなった」「結末が雑」等々……。そのレビューは確かに当たっています。でも個人的には、それはそれでいいじゃない、とも思っています。
全三巻を通してみると、登場人物は同じで話もつながっているはずなのに、一巻ごとに作品のジャンルがまったく違うのに驚きます。
一巻が手品や新興宗教のトリックを暴くミステリー。二巻がアフリカを舞台にしたロードノベル。そしてこの三巻はスプラッタホラー。
それは著者の中島らもさんが、自分の面白いと思うものを全部つぎ込んだ証のような気がします。
だからこそこの作品の吸引力やテンションは、本当にすごいですし、これと同じような作品を思い浮かべてみろ、といわれても何も浮かびません。それだけ唯一無二の作品だと思うのです。
読む人によっては、この三巻が肌に合わない人はいると思いますし、自分も手放しでこれを人に勧めるのは躊躇します。それでもこの作品は、面白いと思うものを詰め込んだびっくり箱だと言えると思います。
第47回日本推理作家協会賞
1994年版このミステリーがすごい! 5位
- 感想投稿日 : 2018年11月11日
- 読了日 : 2018年11月11日
- 本棚登録日 : 2018年11月11日
みんなの感想をみる