さむけ (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-4)

  • 早川書房 (1976年9月1日発売)
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本棚登録 : 763
感想 : 67
3

 探偵リュウ・アーチャーの元に新たに舞い込んだ依頼は新妻の失踪事件というものだった。ほどなく居所は分かるが、彼女が殺人事件に巻き込まれてしまい…

 探偵の失踪人探しという出だしに、事件に対し過剰な感傷を挟まない文章、時々挟まれる小気味いいアーチャーと登場人物たちの会話など、「チャンドラーの後を継ぐ」と呼ばれている作家の作品だけあって確かにハードボイルドらしい雰囲気が楽しめる小説だと思います。

 過去の事件を追っていくことに話の軸が移っていき、それに伴い証言を集めることが中心になっていくので、少しその過程が退屈だったことや、
行方不明となった新妻の話がちょっと中途半端に感じてしまったのが残念でしたが、
ラストに明らかになるある人物の狂気にはタイトル通り確かに”さむけ”がしました。

 最後の最後までなかなか事件の全容が明らかにならず、「もうページ数もないのに決着を着けられるのか」と勝手に心配しながら読んでいたのですが、その不安は杞憂でした(笑)
少ないページ数ながらしっかりと人の狂気とそれを向けられた人物や事件の皮肉さを、最後の数ページでしっかりと書き上げているのが非常に印象的でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー・サスペンス
感想投稿日 : 2014年11月13日
読了日 : 2014年11月12日
本棚登録日 : 2014年11月5日

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