神出鬼没の殺人鬼”魔術師(イリュージョニスト)”とライムたちの追走劇を描く下巻。
この小説を例えるとするなら荒れた海の浜辺。何度も大きな波がやってきて、それが引いたと思いきやまた大きな波が来る。息もつかせぬツイストのオンパレードに夢中になります。
こうした小説に関しては残りページ数で「もう一山ありそうだな」といろいろ勘ぐってしまうのでページ数の実感が湧きにくい電子書籍で読みたくなりますね。(勘ぐっても十二分に面白いのですが)
そして自分のそうした考えすらも逆手に取ったどんでん返しも最後に用意されていて非常に満足。本当にディーヴァ―のツイストへのこだわりと、サービス精神に頭が下がります。
作中でイリュージョニストでライムたちの捜査に協力するカーラが、イリュージョンのテクニックについて語る場面があるのですが、そのテクニックやトリックというものが本当にミステリのテクニックと似ていることが分かります。
だからある意味カーラの語りは、ディーヴァ―自身のミステリ観を表しているようにも思えます。そしてそのテクニックをこれでもか、というほど使った作品なので息つくヒマなく読んでいたように思います。
一方で登場人物たちの魅力も存分に活かされた作品でもあります。
ライムの優しさや、少しシニカルな言い回しも冴えてますし、サックスが警察という厳しい社会で懸命に闘っていること、
またカーラの母との話や師匠の話など、登場人物たちそれぞれに色々な魅力が付与されています。
改めてリンカーン・ライムシリーズの面白さと安定感を実感した作品でした。
2005年版このミステリーがすごい!海外部門2位
- 感想投稿日 : 2015年4月6日
- 読了日 : 2015年4月2日
- 本棚登録日 : 2015年3月31日
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