知の迷宮に喩えられるこの小説。そして連続殺人の犯人探しの小説だったはずなのに、キリスト教の議論、様々な文学との関連、歴史的文脈、哲学的思考…と読んでいくほど自分が小説のどこに迷い込んだのか分からなくなります。
最後まで読み終え犯人にたどり着いた、という意味では自分は一応この本の迷宮を抜け出せたのかな、とは思うのですが、でも一方で
解説にあるような様々な文学作品へのオマージュだとか、作中の登場人物たちの議論が理解しきれなかった、という点においては、この迷宮を完全に制覇はできなかった、
ゲームのダンジョンふうに言うなら、脱出はできたけど、隠し通路や宝箱なんかを見つけられないまま抜け出した、ということになるのかな、と思いました。
しかし、それでも上巻の文書館の探索シーンと、下巻の壮絶なクライマックス、そして一冊の本と文書館をめぐる謎と冒険部分だけでもこの本を読んだ価値はあると自分の中では思っています。
そして読んでいて伝わってきたのが著者のウンベルト・エーコの本、そして知識に対する敬虔の念。この小説は全ての先人、そしてこれから生まれてくる本と知識に対する敬虔の念が根底にあるように思います。
またすぐ読み返す気分にはなれませんが、いつか覚悟と装備をある程度整えてこの迷宮に立ち向かってみたいと思わされる小説でした。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリー・サスペンス
- 感想投稿日 : 2015年11月15日
- 読了日 : 2015年11月14日
- 本棚登録日 : 2015年11月5日
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