狼と香辛料 (2) (電撃文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/アスキー・メディアワークス (2006年6月10日発売)
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本棚登録 : 2159
感想 : 112
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この小説を読んで一つ気づいたこと。自分は恋愛・ラブコメ自体が苦手なのではなく、特に好印象の持たないキャラや人物の恋愛描写が苦手なのだなあ、ということ。じゃなきゃ、この巻でのホロとロレンスのやり取りなんて読んでられねえわ(笑)


ロレンスを子どものようにいじりからかい、そしてどこか老獪な面を持ちつつも、時に寂しがったり、弱気な面や気遣いを見せたり、すべてひっくるめてただただ可愛いホロ。

一方でロレンス。基本的にはホロにいいようにやられつつも、時折うまいようにやり返すのが、またニヤニヤできる。二人のやり取りってとにかく迂遠なのだけど、会話の妙があるのと、関係性の描き方が抜群に上手いから、その迂遠さが気にならない。別に事件が起こらなくてもずっと二人の会話を読んでいるだけで、普通に一冊分読み終えられるのではないかなあ、とまで思います。

世界観も相変わらず良く出来てます。商人同士の心理戦や腹の探り合い。このあたりをファンタジーの世界観に落とし込んで、物語に組み込む手腕はさすが。二人が訪れる都市や、世話になったりあるいは窮地に陥れられる商会、そして出会う人々、いずれの息づかいも聞こえてくるようです。

その理由にあるのが、人々の文化と生活をしっかり描いていることだと思います。優秀な能力を持ちつつも、現状に不満を抱く羊飼いの少女。宗教都市として、異教徒の討伐に力を入れ、武器がよく取引されている街などなど。

こうした設定たちが完璧に生かされ世界が作られ、そして生まれる物語。それはファンタジーの世界の話でありながら、なぜか絵空事に思われません。たぶんこういう世界があったら、絶対にこんな事件もあるんだろうな、と。そんなふうに納得させられるのです。

ただちょっとだけ不満点をあげるとすると、今回はホロの活躍がちょっとチートだったかなあ。もちろんロレンスもだいぶ頑張ってはいましたが……。次巻ではロレンスがホロを助けるくらいの活躍も、期待したいなあ。そして次の街にも期待大です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF・ファンタジー
感想投稿日 : 2020年3月23日
読了日 : 2020年3月22日
本棚登録日 : 2020年3月22日

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