1923(大正12)年から1930(昭和5)年にかけての、主に初期の短編小説を集めたもの。
遥か昔に読んだ新潮文庫の『機械・春は馬車に乗って』はもっと後期のものが多かったようで、今回の岩波版と重複はそんなに多くなかった。
これまで店頭で、岩波文庫の『旅愁』などを見かけたのに何となくやり過ごして買いそびれてしまった。岩波文庫や講談社文芸文庫などでも横光利一の本はどんどん廃版になって、現在入手可能なのはこれらの短編集だけのようだ。今回読んでみたらやはり、かなり面白かったので、もっと読みたいのだが手に入らない。古書で全集があるならそれを買うしかないのかもしれない。が、全集を読むほど好きなのかと問われると、いや、そこまででもないような。
今回読んだ作品はそれぞれが趣向が凝らされていて、当時実験的と映ったのかもしれないが、これらは現在でも新鮮な印象を持ち、価値があると思う。ちょっとワクワクするような読書体験だった。
巻末の長めの『日輪』は横光のデビュー作らしいが、卑弥呼など登場する古代人たちの台詞がなんだか異次元な感じがして、これでコミュニケーションが成り立っているのか?と不思議に思うとともに、にんまりしてしまった。物語としては、何故か「影絵」や昭和に登場した「劇画」の世界を彷彿とさせた。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
文学
- 感想投稿日 : 2022年6月17日
- 読了日 : 2022年6月16日
- 本棚登録日 : 2022年6月16日
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