菊と刀 (光文社古典新訳文庫 Cヘ 1-1)

  • 光文社 (2008年10月9日発売)
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「本当に国際的というのは、自分の国を、あるいは自分自身を知ることであり、外国語が巧くなることでも、外人の真似をすることでもない。」
白洲正子さんの言葉である。

グローバル化という言葉が当たり前になり、自身も海外と仕事をする機会が増えた今、改めてこの言葉の重みを感じる。

この言葉は国内外のケースだけではなく、もっと身近なところにも当てはまると思う。国内だけで見ても、他の地域の文化、もっと言えば他の人のことを理解するには、まず自分の故郷のこと、自分自身のことを知らねばならない。

こういった考えに至るには、違う文化圏に飛び込むことが必要に思う。幸か不幸かはともかく、自分は就職以降故郷を出て複数の地方で生活をすることになり、文化の異なる環境で仕事をすることになった。海外ほど極端ではないにせよ、こういった文化の違いを経験することは、人生の中で非常に大きな影響を及ぼしている。

この本が書かれたのは今から70年以上前。終戦前後のタイミングであり、著者のベネディクト史は一度も日本を訪れることなく、日本で過ごしたことがある外国人と在留邦人の証言のみでこの本を書き上げたそう。そういう背景から誤認に基づく記載も多く、出版当初から日本人から極端な賛否両論を受けている本とのこと。そういった中で長年に渡って読み継がれているのは、本著が日本の文化、日本人の気質に対して極めて鋭く切り込まれているからであろう。

本の中で印象的だった一節(原文ママではなく、要約)

盆栽は鉢という限られた中でおさまっている内は極めて調和がとれており美しく見える。しかし、ひとたび庭に植えられてしまうと二度と鉢の中に戻すことはできない。自由に生きることを知ってしまうからである。これと同じで、日本人は日本という鉢の中で生きている内はその文化の中における美しさを生き生きと体現するが、ひとたび世界に出てそこに適応してしまうと、かつて自分が生きていた世界の狭さを知り、戻ることができなくなってしまう。

盆栽としての美しさを体現する人生もあれば、大地に根差すことを目指す人生もある。違う世界があることを認識した上で、自分の好きな道を選べることだと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年1月3日
読了日 : 2022年1月3日
本棚登録日 : 2022年1月3日

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