影刀: 壬申の乱ロマン (文春文庫 く 1-32)

著者 :
  • 文藝春秋 (1997年2月10日発売)
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感想 : 6
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壬申の乱を舞台とする歴史短編小説集。壬申の乱とは、大化の改新後、天皇の位をかけて大海人皇子と大友皇子が争う、日本史における大事件。しかし、資料の乏しい時代であり、知名度は今ひとつ。

著者は日本書紀など限られた資料のわずか数行の記述から、壮大な人間ドラマを想像し、古代の貴族・武人たちが策謀の限りを尽くし、オラが天皇を担ぐ姿・欲望をリアルに描き出す。

どの話にも「闇」の存在が印象に残る。この時代、人々の活動は太陽が出ているときだけ。社会を支配していたのは、人間ではなく、現代では考えられない暗く深い闇だった。

ベスト話は、机上の帝王学にとらわれた大友皇子と政略婚で嫁いだ十市皇女が壬申の乱をきっかけに、互いを理解しあうことができた「別離」。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史モノ
感想投稿日 : 2010年7月5日
読了日 : 2010年7月5日
本棚登録日 : 2010年7月5日

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