あの戦争と日本人

著者 :
  • 文藝春秋 (2013年7月10日発売)
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幕末から敗戦までの日本人が歩んだ道を論じた歴史読本。

その間の日本人は幕末をピークに退化し続けた。幕末から明治にかけて天皇、政治家、軍人たち国家のトップは一丸となって日本を守り、発展を志した。愛する国を近代国家にすることが彼らの生きがいであり、プライドだった。そして、近代国家へ仲間入りする。

やがて、日本人は近代国家の日本しか知らない世代へと移る。その世代にとって、日本は戦争をすれば必勝する先進国であり、滅びることなんてありえない。そして、日本は原子爆弾を落とされ敗戦を迎える。

どこで日本人はこうなったのか。幕末、命がけで外国から日本を守り抜いた志士たちの精神はどこへ行ってしまったのか。著者はそのキーポイントを日露戦争と考える。日露戦争は日本もロシアも勝利していない戦争だった。それなのに日本は戦勝国として振る舞った。というか、振る舞わなければ世論が納得しなかったのだ。勝てなかった戦争を勝ったことにしてしまった歪んだ思想は、その後の日本人に大きな悪影響を与えた。

敗戦から戦後昭和の時代を経て、平成の現代日本。日本人は戦中の国に対する無責任精神から脱することができたんだろうか。それが明らかになるのは、戦争のような日本人全体が体験する大国難が起きた時だろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史モノ
感想投稿日 : 2015年8月29日
読了日 : 2015年8月29日
本棚登録日 : 2015年8月29日

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