名前が付けられたり付けられなかったりするような不思議な人間ではない生物の生き様やその生物と人間との関わりを描いた幻想譚の短編集。
始めはそれぞれの話に出てくる怪異が何かのメタファーなのではないかと思って一つ一つ考えて読んでいた。けれど、「荒神」まで読んだところで、そこまで深く考えずに不思議な世界の雰囲気を楽しむものであることに気付き、それ以降はその世界にどっぷり浸かることだけを考えて読んだ。この考えは意見が分かれると思うが、それが幻想小説のいいところだと思う。
個人的には「狐塚」と「鼹鼠」が好きだった。「狐塚」は狐のような高齢の男性と主人公の年の離れた恋の話で、その男性だけでなく人間もまた得体の知れないものとして描かれていた。人同士であれ人と化け物同士であれ、分かってるつもりになっているだけで、その実何も分かっていないということが印象的だった。「鼹鼠」は化け物の丁寧な生活という感じの話で、一日の過ごし方や人間との関わり方が描かれていた。多くの人が気付いていないだけで、実は人間と化け物が持ちつ持たれつの関係にあるというところが好きだった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年9月10日
- 読了日 : 2023年9月10日
- 本棚登録日 : 2023年9月10日
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