小惑星探査機「はやぶさ」が打ち上げられてから地球に戻ってくるまでの冒険を描いています。はやぶさに襲いかかる、予想を越える試練の数々に対して、知恵を振り絞ってミッションをクリアした、日本のはやぶさのチームの執念の物語です。著者の山根氏が、打ち上げから帰還まで7年の間、はやぶさチームに張り付いて取材を続けてきた、膨大な資料がもとになっており、山根氏の執念の賜物でもあります。インタビューで開発担当者から聞き出した秘話がたくさん盛り込まれており、ハイテクとローテクの両輪によって「はやぶさ」が支えられ、幾多の困難を乗り越えてきたことがわかりました。特に、開発担当者のヒラメキと日本を支える企業群の持つ底力によって、磨き上げられて絶妙に組み合わされたローテクの数々がとても興味深く感じました。NASAにおいて開発費が25億円を超えてしまい断念した、低重力の小惑星上で活動する小型ロボットをわずか3000 万円で作ったそうです。残念ながら小惑星に到達することができませんでしたが・・。世界トップの経済力を誇るよりも、あるいは世界をリードする政治力を誇るよりも、こんな不可能と思われることにチャレンジして道を切り開いた、凄腕のチームが日本に存在していることを素直に誇りに思います。またこのチームの存在を我々に知らしめてくれた著者の山根氏にも感謝します。このチームがなぜここまで努力できたのか、中心となった技術者の「とてもおもしろかったから」という言葉が印象的です。結局、おもしろいから頑張れるんですよね。これからもどんどんとおもしろい目標を立てて、どんどんとチャレンジしていく日本でありたい、と思った次第です。結果や評価はあとから付いてきます。「どうして世界一でなければいけないんですか。2位ではダメなんですか」などと言っていた国会議員には、このようなおもしろさは永久にわからないでしょうが・・。
- 感想投稿日 : 2018年11月19日
- 読了日 : 2010年8月4日
- 本棚登録日 : 2018年11月19日
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