僕の好きな女性作家の筆頭が川上弘美さんである。
高校時代に文藝春秋で芥川賞受賞作品『蛇を踏む』を読んで以来、すっかり虜になってしまった。というか高校生のときから、文藝春秋を読んでいたんだよな、儂。ガキんちょのくせになんとも老成た奴だ、我がことながら。
川上弘美さんの文章はとにかく「ゆるい」と思う。恋愛を描くにしても、不思議な出来事を描くにしても、文章がほわわんとしているのだ。日常の何気ない一側面を、誇張もなく衒いもなく、柔らかに表現する。好きな作家、というよりも、う~む、一度ハマるとクセになる作家、というべきか。
この『ハヅキさんのこと』には20余りの短編小説が収められていて、あっという間に読み終えることができるのだが、そうするのは勿体ないように思う。ひとつひとつの短いお話のそれぞれに、登場人物のそれぞれの人生がとても奥行き深く描かれていて、この短い文章でよくぞここまで表現できるなあと驚く。じっくりと味わいたい川上作品の短編が勢揃いした、いわばオールスターの趣がある。大満足の1冊。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
01.小説
- 感想投稿日 : 2010年12月19日
- 読了日 : 2010年12月19日
- 本棚登録日 : 2010年12月19日
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