すべての見えない光 (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社 (2016年8月26日発売)
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2016年のガイブン界最大の話題作をいまさら読んだが、最も話題になっているときには書きにくかった感想。
すごく面白い…のだが、私の好みからすると「面白すぎる」。日本翻訳大賞授賞式で柴田さんが「宝石なしでやって欲しかった」といったが、首肯する。そう、伝説的な宝石まで出てきて数奇な話がパズルのようにうまくまとまりすぎた感じはある。ヴェルナーとマリー・ロールはどう出会うのだろうとわくわくするが、そのぶん「けりがついた」後の残り数十ページが物足りなくもあった。小説の瑕疵とはいわないがnot for meというところ。
映画化したくなりそうなベストセラーとして私の中では「海を照らす光」と同じフォルダに入る。サン・マロの写真をネットで見ると、破壊された後、元通り再建したそうで美しい石造りの街だった(ワルシャワ然り。ヨーロッパは「元通りに再建する」情熱と誇りが凄い。)映像で映えそう。
翻訳は見事だ。原文の独特のリズムと詩的な叙情性が想像できる。藤井さんは「いままでの翻訳で一番多く読点を打った」といっていた。

以下、藤井さんのツイッターからの情報。
・翻訳しているときに頭に鳴り響いていた音楽はスフィアン・スティーヴンスの『キャリー・アンド・ローウェル』→Amazonでダウンロードして聞きながら読んだ忠実なファン。
・表紙はキャパの写真で、キャパは戦中サン・マロを訪れて撮影もしている

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外
感想投稿日 : 2017年6月4日
読了日 : 2017年6月4日
本棚登録日 : 2016年9月10日

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